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固有振動数解析の流れを“ステップ・バイ・ステップ”で理解する構造解析、はじめの一歩(6)(2/3 ページ)

「構造解析」を“設計をより良いものとするための道具”として捉え、実践活用に向けた第一歩を踏み出そう。第6回は「固有振動数解析」をテーマに取り上げ、その手順についてステップ・バイ・ステップで解説する。

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準備するもの

3Dソリッドモデル

 線形静解析のときと同様に、3Dモデルが必要です。前回の記事を参考に3Dソリッドモデルを準備してください。

CAEソフト

 固有振動数を解析するわけですから、線形静解析と同様にCAEソフトがないとどうにもなりません。これも前回の記事を参考にしてCAEソフトを入手してください。線形静解析が可能なソフトウェアであれば、だいたいは固有振動数解析もできます。

材料定数表と単位換算表、それに電卓

 この3つは、解析をやる人の“三種の神器”といえます。詳細については、前回の記事を参照してください。

ステップ・バイ・ステップ

 固有振動数解析の手順をステップ・バイ・ステップで説明します。固有振動数解析は、線形静解析よりも手順としてはカンタンです。

形状を準備する

 今回、固有振動数解析の例題形状として「音叉(おんさ)」を選びました(図2)。音叉は、楽器のチューニングに使うものです。ギターを弾く方にはなじみのある道具です。音叉の柄の部分をつまみ、U字型の部分で膝を軽くたたき、端点をこめかみに押し付けます。骨伝導で「ラ」の音がアタマの中に響きますので、それを聞きながらギターの5弦を合わせるわけです。音叉の発生する「ラ」の音が正確でなければ、オーケストラなどのハーモニーがバラバラになってしまいます。

実際の音叉と寸法、材料定数
図2 実際の音叉と寸法、材料定数 [クリックで拡大]

 1939年にロンドンで開催された国際会議で、室温が20℃のとき「ラ」の音は「440Hz」と決められました。その後、1953年に国際基準となり、現在まで変更されていません。

 ここでは、実際に音叉をモデリングして、固有振動数が440Hz近傍かどうかを確かめてみます。

材料定数を調べる

 音叉の材料となるものはいろいろとあるようですが、今回の音叉は「ステンレス」製です。

 線形静解析は、ヤング率ポアソン比だけで解析できましたが、固有振動数解析には、ヤング率、ポアソン比に加え、密度が必要です。

 解析に使用したステンレスの材料定数は以下の通りです。

  • ヤング率:195GPa
  • ポアソン比:0.29
  • 密度:8.0 g/cm3
  • 線膨張係数:1.73×10-5/℃
  • 降伏応力:215MPa

 前回の記事でも触れましたが、大切なことなので、もう一度書いておきます。

 ヤング率の単位のSI接頭辞は「G(ギガ)」で、降伏応力の単位のSI接頭辞は「M(メガ)」です。3桁違いますので注意してください。

 自分で検索して調べてみると分かることですが、例えば、ヤング率や線膨張係数は温度によって変わりますし、降伏応力は板厚によって変化します。材料定数は一定ではなく、温度や形状によって変わる場合があるということを認識しておいてください。

メッシュ分割する

 今回は「Autodesk Fusion 360」のメッシュ分割機能を使いました。特に何も設定することはありません。「メッシュ分割をする」ということを全く意識せず、知らぬ間にメッシュ分割が完了します。メッシュサイズすら指定する必要はありません。

 有限要素法にとって「メッシュは命」です。メッシュサイズについては前回の線形静解析の記事で詳しく説明していますので、まだご覧になっていない方はぜひ目を通しておいてください。

固定を設定する

 音叉には、柄が付いています。柄をつかんでたたくので、柄の部分全体をグルリと固定します。固有振動数解析では、荷重を設定する必要はありません。

解析する

 ここまでくれば、固有振動数解析を実行できます。次ページで結果を確認してみましょう。

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