日本の製造業を取り巻く環境と世界の“不確実性”の高まり:ものづくり白書2020を読み解く(1)(2/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2020年版ものづくり白書」が2020年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2020年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第1回では日本の製造業の現状について整理した上で、日本の製造業を取り巻く“不確実性”について解説する。
国内製造業の現状
次に、国内製造業の業況を確認したい。企業の全般的な業況を示す日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」の業況判断DIを見ると、大企業の製造業は、2013年半ば以降プラス圏を推移してきたが、2019年に入り、米中貿易摩擦への懸念や原材料価格の上昇などを背景にDIのプラス幅が縮小し、2019年第1四半期以降5期連続の悪化となった。また、中小製造業においても2019年に入りプラス幅が縮小し、2019年第2四半期以降は「悪い」と回答した企業が「良い」と回答した企業を上回り、DIがマイナスとなる状況が4期連続している。
非製造業では2019年第4四半期時点では高水準を維持しており、2019年以降業種別の業況の差が拡大していたが、4月1日に公表された2020年第1四半期分では、新型コロナウイルス感染症などの影響を受け、製造業、非製造業ともに悪化し、大企業製造業では2013年第1四半期以来7年ぶりとなるマイナスを示した(図3)。
製造業の営業利益の推移を見ると、2012年以降、熊本地震による被害や英国のEU離脱を支持する国民投票による世界情勢の不透明感の高まりなどを背景に利益が縮小した2016年を除き、2017年まで増加傾向を続け、同年には17.3兆円まで拡大した。しかし、2018年秋以降の米中貿易摩擦による中国経済の減速や海外経済の不確実性などの影響を受け、2018年、2019年は2年連続の減益となっている。特に2019年は中国経済のさらなる悪化に加えて台風や暖冬による個人消費の縮小などもあり、輸送用機械器具製造業(自動車など)、生産用機械器具製造業、化学工業など業種別に見ても大幅な減益となり、製造業の営業利益は2013年以降最低となる12.5兆円にとどまっている(図4)。
2019年12月に行われたアンケートによれば、製造業の業績に関する認識については、売上高、営業利益とも悪化傾向が続いている(図5、6)。
企業規模別に見ると、中小企業、大企業共に営業利益、売上高いずれも、「減少」または「やや減少」の合計が「増加」または「やや増加」と回答した割合より大きくなっている(図7、8)。
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