IoT尿検査デバイスのBisu、技術へのこだわりが招いた試作時の失敗とは:モノづくりスタートアップ開発物語(2)(2/3 ページ)
モノづくり施設「DMM.make AKIBA」を活用したモノづくりスタートアップの開発秘話をお送りする本連載。第2回はIoT尿検査デバイスを開発するBisuを紹介。マイクロ流体技術が尿検査分野にイノベーションを起こすと確信して開発を進めた同社だが、思わぬ障害に直面する。
尿検査分野にイノベーションを起こす
検査デバイスが現在の形に落ち着くまでには紆余(うよ)曲折があった。Bisuのダニエル氏は「柔軟性を常に持つこと」「自分たちの手元にある技術にこだわりすぎないこと」「作ったものに愛情をもちすぎないこと」を意識して、デザインの見当を重ねてきたという。
――尿検査というと健康診断のイメージが強くありますが、そもそもデバイス開発に当たって、どのような使用シーンを考えていましたか。
ダニエル・マグス氏(以下、ダニエル氏) もともと私には「普段私たちがトイレに流してしまっている尿も、『検査する』ことでビジネスの機会が生まれるのではないか」という思いがあった。
アイデアが形になったのは、マイクロ流体技術を活用した尿検査デバイスの開発構想を持っていたブーワ・ボイチェフ(現CTO)と出会ってからだ。本来、尿検査は血液検査とセットで実施することを前提としているので、尿検査だけでは体の健康状態に関する幾つかの項目が正確に検査できない。しかし、マイクロ流体技術を活用すれば、こうした課題も解決可能になる。
尿試験紙は1950年代に誕生して以来、ほとんど技術革新が起きていない領域だ。ブーワと出会って私は「マイクロ流体技術を用いれば、尿検査分野にイノベーションを起こせる。生活習慣の改善や病気を未然に防ぎやすくなり、社会課題の解決にもつながる」と感じ、2015年4月に共同でBisuを設立した。
設立後、最初に作った試作品は現在当社が展開している尿検査デバイスとは全く異なったデザインだった。当時は検査デバイスをトイレに直接取り付けて検査しようと考えていたので、その取り付け方法に頭を悩ませていた。
――現在のデバイスとは全く違いますね。
ダニエル氏 だが、トイレに取り付ける方式だと、デバイスを搭載したトイレを当社で製造してトイレメーカーと直接競争する、あるいは、ライセンス形式で技術だけを売るビジネス形態をとるしか事業戦略上の選択肢はない。これはあまり魅力的には思えなかった。
そこで改めてマイクロ流体技術の応用範囲の広さに着目した。マイクロ流体技術はオムツの中の検査やペットの尿検査、唾液の検査などにも対応できる。検査場所をトイレに限定する必要がない。このため、まずは一般の人が簡単に使えるタイプの製品をつくることに注力しようと方針を変更した。2017年9月ごろのことだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.