北米と欧州で操業再開、日系乗用車メーカーの5月の世界生産:自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)
日系乗用車メーカー8社の2020年5月のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響を受け、4月に続き国内、海外ともに8社すべてが前年割れとなった。グローバル生産台数は8社全てが前年同月比で半数以下となったものの、4月と比較するとメーカーによって傾向が分かれた。
日系乗用車メーカー8社の2020年5月のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響を受け、4月に続き国内、海外ともに8社すべてが前年割れとなった。グローバル生産台数は8社全てが前年同月比で半数以下となったものの、4月と比較するとメーカーによって傾向が分かれた。
4月と5月の減少幅を比較すると、悪化したのはトヨタ自動車、日産自動車、ダイハツ工業、三菱自動車の4社だ。トヨタと日産は主要市場の北米で生産が再開されたことで海外生産は回復したものの、国内生産のマイナス幅が広がった。輸出や国内市場の回復が遅れていることが要因とみられる。東南アジアのウエートが高いダイハツと三菱自は、国内、海外ともに減少幅が広がった。中でも三菱自のグローバル生産は4月に比べて10ポイント以上悪化するなど、依然として厳しい状況が伺える。
4月に比べて回復が進んだのがマツダとスズキだ。マツダは4月比7.0ポイント回復し、8社中最も高い伸びを示した。スズキも前年同月比6.0ポイント増加し、グローバル生産のランキングでも7位から4位へ順位を戻した。スズキはグローバル生産の半数を占めるインドでの生産再開が影響した。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 122,744 | 243,165 | 37,506 | 137,071 | 365,909 |
▲ 57.0 | ▲ 53.0 | ▲ 78.5 | 13.5 | ▲ 54.4 | |
ホンダ | 47,116 | 174,485 | 39,158 | 126,057 | 221,601 |
▲ 38.7 | ▲ 54.5 | ▲ 77.1 | ▲ 1.4 | ▲ 51.8 | |
日産 | 12,978 | 143,920 | 2,130 | 133,587 | 156,898 |
▲ 78.7 | ▲ 59.9 | ▲ 98.4 | 2.1 | ▲ 62.6 | |
スズキ | 35,219 | 14,002 | - | - | 49,221 |
▲ 52.3 | ▲ 92.7 | - | - | ▲ 81.4 | |
マツダ | 13,695 | 29,665 | 100 | 23,181 | 43,360 |
▲ 83.6 | ▲ 12.0 | ▲ 98.5 | 58.1 | ▲ 62.9 | |
ダイハツ | 36,252 | 4,465 | - | - | 40,717 |
▲ 53.1 | ▲ 93.1 | - | - | ▲ 71.3 | |
三菱 | 8,383 | 14,607 | - | 7,027 | 22,990 |
▲ 81.7 | ▲ 73.6 | - | ▲ 17.6 | ▲ 77.3 | |
スバル | 11,115 | 4,947 | 4,947 | - | 16,062 |
▲ 77.8 | ▲ 87.7 | ▲ 87.7 | - | ▲ 82.2 | |
合計 | 287,502 | 629,256 | 83,841 | 426,923 | 916,758 |
※上段は台数、下段は前年比。単位:台、%。北米は、米国、カナダ、メキシコの合計 |
地域別では、各国に先駆けて生産を再開した中国に加えて、5月からは北米や欧州も稼働している。一方で日本や東南アジアは依然として厳しい状況が続いている。6月は新型車の投入など工場の稼働率を高めているメーカーも多く、前年比の減少幅はさらに縮まると予想される。
メーカー別に見ると、トヨタの5月のグローバル生産台数は前年同月比54.4%減の36万5909台と5カ月連続で前年実績を下回った。国内生産は同57.0%減の12万2744台と8カ月連続のマイナス。前年比のマイナス幅は4月に比べて31.1ポイント悪化した。COVID-19感染拡大による世界的な需要減少に対応するため、国内全工場で2日間操業停止した影響などが表れた。
海外生産は前年同月比53.0%減の24万3165台と5カ月連続のマイナス。ただ、減少幅は改善しており、4月比で13.2ポイント回復した。中国は「RAV4」や「カローラ」など新型車の好調に加えて、オンラインイベントの誘致活動が奏功したこともあり、前年同月比13.5%増と2カ月連続の前年超え。アジア全体ではフィリピンやマレーシア、インドで生産を再開したほか、タイで回復しているものの、引き続き生産調整を実施していることから同25.4%減だった。北米は5月11日以降段階的に生産を再開しているものの、需要減少に伴う生産調整を実施しており、同78.5%減にとどまった。欧州も生産を再開しており、同58.9%減まで回復した。
また、トヨタでは当初2020年4〜6月期の世界販売を前年同期比40%減と予測していたものの、5月の実績では同31.8%減と想定を上回るペースで回復が続いているとしている。
ダイハツ、ホンダ
グループ傘下のダイハツはトヨタ以上に減少幅が拡大している。5月のグローバル生産は、前年同月比71.3%減の4万717台と3カ月連続の減少だった。減少幅は4月から8.9ポイント拡大した。マレーシアとインドネシアに工場を構える海外生産の落ち込みが進み、同93.1%減の4465台と3カ月連続のマイナスだった。特にインドネシアは同99.8%減の84台にとどまった。ただ、6月3日から稼働を再開しており、6月以降は徐々に回復が進むとみられる。
国内生産も厳しい状況が続いており、前年同月比53.1%減の3万6252台と2カ月連続で減少。減少幅は4月から18.4ポイント広がった。このうち登録車は「ロッキー」とトヨタ向けにOEM(相手先ブランドによる生産)供給する「ライズ」の小型SUV兄弟が純増となったこともあり、同6.0%減にとどまった。ただ、軽自動車が需要減退による生産調整で同69.9%減と大幅に減少し、台数も登録車を下回る結果となった。
ホンダの5月のグローバル生産は、前年同月比51.8%減の22万1601台と10カ月連続の前年割れとなった。ただ、減少幅は4月比で0.2ポイント改善した。海外生産は同54.5%減の17万4485台で8カ月連続のマイナスとなったものの、減少幅は1.8ポイント改善した。
地域別では、北米が生産を再開したものの、稼働調整により前年同月比77.1%減の3万9158台と8カ月連続のマイナス。このうち米国は同75.2%減の2万8047台だった。欧州は4月に続き0台。いち早く回復し4月に過去最高を記録した中国は、同1.4%減の12万6057台と2カ月ぶりのマイナスとなったが、2019年5月の生産が高水準だった反動であるため、回復基調であることに変わりはない。
アジアは同29.8%減だが中国以外は依然として厳しく、中国を除いたアジア合計は7356台にとどまった。国内生産は同38.7%減の4万7116台と9カ月連続のマイナスで、減少幅も4月より6.6ポイント広がった。国内市場の需要減速が続いており、これを受けて生産調整を実施している。
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