労働災害を“リアルに”追体験、安全教育市場に期待の危険誘発体感装置:製造ITニュース
VR専門企業として安全教育、研究支援、アミューズメント技術などのVRシステムの開発を進めてきたソリッドレイ研究所は2020年6月8日、VR技術を用いた危険誘発体感装置「セーフマスター」の新製品の販売を開始した。
VR専門企業として安全教育、研究支援、アミューズメント技術などのVRシステムの開発を進めてきたソリッドレイ研究所は2020年6月8日、VR技術を用いた危険誘発体感装置「セーフマスター」の新製品の販売を開始した。危険誘発体感装置は「意図的に作り出された危険な状態に自分があると錯覚し、災害に遭ってしまうことを体験できる(錯覚体感できる)装置」(ソリッドレイ研究所 取締役 営業部長の伊藤竜成氏)だという。
ソリッドレイ研究所では、「VR技術で安全教育に貢献できることはないか」(伊藤氏)という思いから、2006年に旧セーフマスターを開発。主に製造業に向け20数台の販売実績があった。ただ、安全教育のニーズは継続的に高まっていくと考え、より高い効果を求めるため、新しい危険誘発体感装置「セーフマスター」を開発した。
新製品は、VR技術により、自分の手が事故に遭う"錯覚"をリアルに体験することができる。解像度2880×1600ピクセルの立体映像と広い視野角(対角110度)を実現し臨場感を高めた。労働災害の様子をリアルに再現し、その減少に向けた教育に役立てる。
「CGの手」が「自分の手」に一致して実寸大表示され、クロスモーダル現象により錯覚した手が思った以上に危険な箇所に近づき被災してしまう様子を再現する。クロスモーダル現象は、バーチャル体験によって実際には起こっていないことを脳が錯覚し、他の感覚を喚起する現象のことだ。
「セーフマスター」は映像による視覚情報、音による聴覚情報、作業姿勢の一致による体感などを災害発生の状態に近づけることで、錯覚を引き起こしやすい状況を作ることが可能だ。映像の手を自分の手と錯覚した状態で、手があらぬ方向に曲がったり傷ついたりすることで嫌な感覚が残る。ユーザーは自分の手を動かすようにCGの手を操作し、作業を疑似体験できる。危険領域にCGの手が近づくと、リアルな災害が発生する。
PC、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、ペンタブレット、マウスデバイス、スピーカー、VR専用ソフトウェアで構成され、筐体サイズは幅690mm×奥行き680mm×高さ940mm、本体重量は45kgとなっている。必要な機器は箱型の筐体に全て収めており、煩わしい設定なく、ボタン1つで起動や終了処理を行える。筐体にHMDが固定されているため、通常のVRシステムに比べ、HMDを装着する手間がなく、安定した映像提示を実現している。「最初開発した装置はモニターで映像を提示していた。今回の機種はHMDを使用したことで解像度が向上しより臨場感が高まったところが特徴となる」(デザイン部専門部長の田邉亨氏)。
人間工学に基づいた設計で、自然な作業姿勢で体験できる。体験者の身長に合わせて接眼部(HMD)の高さも変更(身長160cmまたは170cm)できる。なお、新製品は早稲田大学、三菱重工環境・化学エンジニアリングとの共同特許(特許第4906397号)および早稲田大学との共同特許(特願2020-098975)を基盤にしている。
コンテンツは、清掃編(巻き込まれ災害)、金属プレス編(挟まれ災害)、液抜き作業編(被液災害)の3つの災害事例が含まれている。また、顧客からの要望により、さまざまな災害事例コンテンツを追加することができる。その他、切創対応コンテンツや巻き込まれ対応コンテンツ、感電対応コンテンツなどのオプションも用意する。
用途は、製造現場における労働災害防止のための教育研修、過去の災害の追体験(労働災害防止啓発活動など)、製造の組み立て工程の教育などで「企業の安全訓練所などへの導入を目指す」(伊藤氏)。さらに、視線計測機能の活用により、職場の達人の技を体験・習得できる技能伝承や医療現場での手術シミュレーション、アミューズメントへの応用などにも広がると期待する。価格は828万円(税別)で、初年度50台を販売目標に掲げている。
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