物流施設デベロッパーにおける「モノ売り」から「コト売り」への進化:サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(9)(2/3 ページ)
物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。第9回は、2000年代に物流施設に「所有と利用の分離」という概念を持ち込んだ物流施設デベロッパーが、どうすればサプライウェブ時代の新たなプラットフォーマーなれるのかについて取り上げる。
物流施設デベロッパーの業態転換
物流施設デベロッパーにとって、次なるターゲットは「施設以外のリソース」になるでしょう。入居企業に対して、物流施設だけではなく、ロボットをはじめとする汎用的な物流機械・システムもレンタルやリースで提供するのです。行政の許可さえ得られれば、物流センターで働く作業員の人材派遣サービスを提供することもできるはずです。入居企業が必要とするリソースを広く取りそろえることができれば、その分だけ収益機会を増やすことができます。
もう1つの方向性として、物流センターの運用者に業態転換を果たすことが考えられます。賃料ではなく、作業料を得られるようになれば、収益の大幅な増加を見込めるでしょう。物流施設という「モノ」を開発・提供するだけではなく、入荷、検品、仕分、梱包、出荷といった「コト」までを請け負う事業者になろうというわけです。
もちろん、デベロッパーは物流センターの運用に関する属人的ノウハウを有しません。従って、物流会社と同じようなオペレーションプロセスを組み上げても、競争力を発揮することは困難です。今までにはないオペレーションを構築してこその事業機会といえます。
その1つの方法は、受け入れる荷物の大きさや形状と、1日当たりの最大入出荷量を限定してしまうことです。そうなれば、今ある物流機械・システムであっても省人化を最大限追求できます。完全自動化を成せれば、属人的ノウハウを必要とせずに済みます。人を必要としないがゆえのコスト競争力も発揮できるでしょう。
デベロッパーとしての立地戦略も大転換を果たすことができます。現状、物流センターの立地は「物流センターで働く作業員を集めやすいこと」が要件となっています。入荷、検品、仕分、梱包、出荷といった作業の遂行には相応の人手を必要とするからです。特に日本では生産年齢人口の減少もあり、駅や住宅地からの距離の近さを考慮せざるを得ません。結果として、それなりの土地代を要する場所となります。
作業員をほとんど必要としない物流センターであれば、港湾や空港からの距離の近さ、高速道路や主要幹線道路へのアクセスのしやすさといった「輸送の利便性」を最優先に用地を選定できます。「輸送の利便性は高いが人手を集めにくい場所」であれば、「土地代を抑えることでの高収益」を実現できるはずです。
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