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物流施設デベロッパーにおける「モノ売り」から「コト売り」への進化サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(9)(1/3 ページ)

物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。第9回は、2000年代に物流施設に「所有と利用の分離」という概念を持ち込んだ物流施設デベロッパーが、どうすればサプライウェブ時代の新たなプラットフォーマーなれるのかについて取り上げる。

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 前回は、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた特別編ということで、パンデミックをはじめとするさまざまな危機的事象の発生に際して、サプライチェーンの維持・継続を図るためのリスクマネジメントの在り方を取り上げました。今回からは、本連載の主題に戻って、物流施設デベロッパー(物流不動産会社)を対象に、サプライウェブ時代における新たなプラットフォームビジネスの可能性を解説したいと思います。

⇒連載『サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会』バックナンバー

物流施設における「所有と利用の分離」

 さて、物流施設デベロッパーは、その成り立ちからして、物流の世界に新たなビジネスを創造してきたといえます。「所有と利用の分離」という今までにはなかった概念を持ち込んだからです。

 過去、物流施設は「所有者による運用」が通例でした。所有と利用は一体化していたわけです。ゆえに、在庫の置き場を増やそうとするなら、自社で物流センターを建設するか、物流センターの所有者兼運用者である物流会社(倉庫業者)に在庫の管理を委託する必要があったわけです。

 時を経て、自社の物流センターの管理を物流会社に委託する荷主が増えてきました。つまり、オペレーションの分離は進んだのです。しかしながら、荷主でも物流会社でもない第三者が物流センターを建設することはありませんでした。そのため、複数の荷主・物流会社が入居することを想定したマルチテナント型の大型物流施設はほとんど存在しなかったわけです。

 物流施設デベロッパーは、この状況に風穴を開けました。日本では、2000年以降、Prologisを始めとする外資系デベロッパーの参入を契機に、マルチテナント型の大型物流施設が急速に増加し、現在では新設される物流センターの過半を占めるに至っています。大和ハウス工業、三井不動産、オリックス、三菱商事といった、さまざまなバックグラウンドを有する日系企業も事業参入を果たしました。物流センターの床面積の広さは入出荷作業の生産性にある程度まで比例すること、ランプウェイ(トラックが2階以上に直接乗り入れることを可能とする傾斜路)の設置は積卸し作業のリードタイム短縮に資することなどを考えると、デベロッパーによる大型物流施設の開発は物流全体の効率化に寄与したといえるでしょう。

 2005年には、国内第一号となる物流リート(REIT)が上場されました。以後、現在に至るまで複数の物流リートが組成されたことで、物流施設の開発に必要な資金を広く集められるようになったこともポイントといえます。「所有と利用の分離」だけではなく、不動産の証券化も成し遂げたわけです。

従来型物流施設とマルチテナント型大型物流施設の比較
従来型物流施設とマルチテナント型大型物流施設の比較(クリックで拡大)

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