SARS-CoV-2ワクチン設計に向けた遺伝子解析結果を公開:医療技術ニュース
NECは、世界中の多くの人のT細胞反応を促進しうるSARS-CoV-2ワクチンの設計に向けて、AI予測技術を活用した遺伝子解析の結果を公開した。個別化がんワクチンの開発に用いている技術を適用した。
NECは2020年4月23日、世界中の多くの人のT細胞反応を促進し得るSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ワクチンの設計に向けて、AI(人工知能)予測技術を活用した遺伝子解析の結果を公開したと発表した。
今回の成果は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の対策として、国際的に広がっているワクチン開発を支援する取り組みだ。NEC OncoImmunityがNEC欧州研究所と協力して研究チームを立ち上げた。研究は、NECとNEC OncoImmunityが個別化がんワクチンの開発に用いている技術を適用したものだ。
研究成果は、査読前論文Webサイト「bioRxiv」に公開。数千種類のSARS-CoV-2のゲノム配列を解析し、世界中の人々に最もよく見出されている100個の免疫の型(HLAアレル型)に対し、ワクチンのターゲットとなりうる構造単位(エピトープ)を特定した。
具体的には、予測アルゴリズムを用いてSARS-CoV-2の全タンパク質を解析。得られたデータを基に、SARS-CoV-2のタンパク質中に共通して見られるエピトープを重複して含むホットスポットを、複数のHLAアレル型に対して特定した。
アルゴリズムのインシリコ検証は、全大陸にわたる人間の遺伝的背景を考慮している。ホットスポット群は、世界中の人々を最も広くカバーし、かつ変異が少なく今後も変異されにくいであろう保存領域で得られたものを優先的に選定した。また安全性のために、ヒトのタンパク質、特に重要臓器に発現しているものとの類似性が高いエピトープは除外した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 新型コロナへの感染抑制能を持つVHH抗体の取得に成功、北里大と花王
北里大学は2020年5月7日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能を有するVHH抗体の取得に成功したと発表した。この研究成果は、新型コロナウイルス感染症の治療薬や診断薬の開発につながることが期待されている。この取り組みは、北里大学 大村智記念研究所 ウイルス感染制御学I研究室 教授の片山和彦氏ら、Epsilon Molecular Engineering(以下、EME)、花王 安全性科学研究所の研究グループの共同研究によるものだ。 - 新型コロナのPCR検査時間を半減し精度も向上する検出試薬キット、島津が発売
島津製作所は、PCR法(遺伝子増幅法)による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査時間を半減できる「新型コロナウイルス検出試薬キット」を2020年4月20日に発売すると発表した。100検体分の検査が可能な1キット当たりの価格(税別)は22万5000円。 - 新型コロナウイルスの感染検査が15分で完了、イムノクロマト法に基づく試薬キット
クラボウは、新型コロナウイルス感染の有無を目視かつ15分で行える「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査試薬キット」の国内販売を2020年3月16日に開始する。10検体分の試験が可能な1キット当たりの価格(税別)は2万5000円。 - 新型コロナウイルスの感染阻止を期待できる国内既存薬剤を同定
東京大学は、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の感染の最初の過程を阻止することで、ウイルスの侵入過程を効率的に阻止する可能性がある薬剤としてナファモスタットを同定した。 - 新型コロナにMaaSや遠隔問診で対応、フィリップスが医療ソリューションを提案
フィリップス・ジャパンは新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策として、同社が提供可能な医療ソリューションを紹介するオンライン会見を開催した。会見中では遠隔問診サービスやMaaSなどの活用が提案された。