形状なくして解析あらず:構造解析、はじめの一歩(4)(1/3 ページ)
「構造解析」を“設計をより良いものとするための道具”として捉え、実践活用に向けた第一歩を踏み出そう。第4回は、設計者によるCAEの基本となる3次元形状の準備をテーマに、3D CADとソリッドモデルについて解説する。
設計者によるCAEの実践には、“3次元形状”が欠かせません。なぜなら、3次元の形状を作って、そこから有限要素データを生成することが「構造解析」のはじめの一歩だからです。というわけで、今回は形状準備のための3D CADとソリッドモデルについて解説します。
3Dモデルが前提の設計者CAE
連載第1回でも説明しましたが、本連載は、設計に軸足を置いた内容をお届けしていますので、設計の話からスタートしましょう。
ほとんどの設計は「図」から始まります。設計アイデアのスケッチを図として描き、それを図面として具体的に寸法を記入し、設計を具現化していきます。図面は、“設計製造情報の共通基盤”として現場で活躍します。
3D CADの登場によって、2次元の「図」が今は3次元の「モデル」(=3Dモデル)に変わりつつあります。
3Dモデルを作るのには手間が掛かります。筆者の調査によると、3Dモデルの作成には、図面作成の3〜3.5倍の時間を要します。それでも設計に3D CADを使うのは、フロントローディングを実現するという目的があるからです。
それほど時間と手間を掛けて作った3Dモデルですから、さまざまな工学情報を得ることができます。重量、重心位置、重心点回りの慣性モーメント、表面積など……。これらの情報は形状が「存在するだけ」で得られる情報です。そして、構造解析に3次元の形状を利用することができます。これこそが3次元でモデルを作ることの最大のご利益です。
実は、3次元のモデルがなくても構造解析を行うことはできます。節点や要素の有限要素データを手作業でコツコツと組み上げていくことで形状を表現します。その作業は、まるで「Minecraft」や「LEGO」で形状を構築する作業のようです。これにはそれ相当の時間と手間が掛かります。
これに対し、3Dモデルがあれば「有限要素データの自動生成」を行うことができます。
有限要素データの作成には、手間と時間が掛かります。解析作業時間の90%以上は有限要素データ作成に費やされていました。そこで「形状を3次元データとして作成して、そこから自動的に有限要素データ(節点と要素)を生成できないだろうか?」というテーマが持ち上がります。筆者が知る限り、それを最初に実現したのは「SDRC(Structural Dynamics Research Corporation)」という会社です。この会社の初代CEO(最高経営責任者)であるDr.Jason R.Lemonは、「CAE」という概念と言葉を作った人でもあります。
現在、設計の主力ツールである3D CADは、もともと解析作業の合理化のために作られたのです。3DモデルとCAEの相性が良いのもうなずけますね。設計者CAEを実践する大前提として、3Dモデルの存在が欠かせないということをまずはご理解ください。
3Dモデルの作成のあれやこれや
3Dモデルから有限要素データである節点や要素を自動的に生成することを「自動メッシュ分割」といいます。自動メッシュ分割が成功しなければ、節点と要素が生成されないわけですから、自動メッシュ分割機能は非常に重要な役割を担うことになります。
最近のメジャーな3D CADの多くにCAEモジュールが準備されています。当然、自動メッシュ分割機能も実装されています。また、自動メッシュ分割機能に特化したツールもあります。自動メッシュ分割は、設計者CAEにとって命綱です。いくつかのツールを使えるようにしておいた方がいいでしょう。
自動メッシュ分割がうまくいくかどうかは、自動メッシュ分割のソフトウェアの性能だけに依存するものではありません。3Dモデルの出来栄えの良しあしに大きく左右されます。
3Dモデルのクオリティは、自動メッシュ分割の成功確率だけでなく、モデルの修正のしやすさにも大きく影響します。
ただ、クオリティの高い3Dモデルの作成方法を定義することは、そう簡単ではありません。その判断基準も業種や製品によって千差万別です。
著者は前述のSDRCという会社に約10年間、勤務していました。その間、3次元のソリッドモデラーが生まれ、製品化に至りました。有限要素データを迅速に作成するために作られたその製品を主力に、設計分野に進出していきました。
その製品をサポートする中で、筆者はクオリティの高いソリッドモデルを作成するためのいくつかのコツをつかみました。以降でそれらを紹介したいと思います。ただし、全てのモデリングに共通するわけではありませんので、あらかじめご了承ください。
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