機械学習で高性能な磁気冷凍材料を発見、水素ガスの低価格化につながる可能性:材料開発(1/2 ページ)
NIMSは機械学習を用いることで水素ガスの液化などに役立つ磁気冷凍材料の候補物質として二ホウ化ホルミウム(HoB▽▽2▽▽)を新たに発見したことを発表した。
物質・材料研究機構(NIMS)は2020年5月12日、AI(人工知能)技術の1つである機械学習を用いることで、二ホウ化ホルミウム(HoB2)が水素液化に用いる高性能の磁気冷凍材料になり得ることを発見したと発表した。
現在、温暖化がグローバルに進行する中で、燃焼時に二酸化炭素を発生させる化石燃料の代替エネルギーとして水素に注目が集まっている。水素は燃焼時に二酸化炭素を発生させずに熱エネルギーを生むため、環境負荷が低いとされている。ただ、水素ガスは気体状態では体積が大きく、そのままでは運搬や保存には不向きだ。そのため一度冷凍して液体化させることにより、体積を圧縮する必要がある。
NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点のグループリーダーを務める高野義彦氏は「水素ガスは20K(-253℃)の極低温で冷凍することで液体になり、体積を約800分の1程度にまで圧縮できる。ただ冷凍方法にはいくつかの種類があるが、従来採用されていたエアコンで水素を冷凍する『気体冷凍』という手法は、冷凍時のエネルギーロスが大きいという問題点があった。これに対してわれわれが新たに取り組んだのが磁気熱量効果を利用した『磁気冷凍』という手法だ。物質の中には磁場をかけるとエントロピー変化による磁気冷凍性能を発揮するもの(磁気冷凍材料)がある。これを利用して水素ガスを冷凍すると、気体冷凍よりもエネルギーロスを抑えられる。これにより、将来的に安価な液体水素の提供が可能になるかもしれない」と説明する。
そこで高野氏らのチームは高い冷凍性能を持つ磁気冷凍材料を効率的に発見するため、機械学習の手法を通じて合成指針を得ることにした。「物質組成とエントロピー変化量が既知である物質のデータを1644個収集して、手作りの磁性体データセットとしてそろえた。データは関連論文から手動で収集した他、論文から自動的にデータを抽出させるテキストデータマイニングの手法も併用した。データセットの80%を使って、アンサンブル学習と決定木手法を組み合わせた勾配ブースティング手法であり、データ解析手法として評価が高い『XGboost』を使って学習モデルを作成。学習モデルの精度を確かめるため、残りの20%のデータを使い、物質の組成データからエントロピー変化量を予測させたところ、高精度で予測できることが確認された」(高野氏)。
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