IoT製品の開発に“アドバンテージ”を、サイプレスが新ソリューションを投入:組み込み開発ニュース
サイプレス セミコンダクタは、IoT製品の開発を容易に行える新たなソリューション「IoT-AdvantEdge」を発表。プログラム可能なビルディングブロックを備えるマイコン「PSoC 6 MCU」を中核に、開発ツール「ModusToolbox」の新バージョンや、村田製作所などの無線通信モジュールと組み合わせたIoT開発キットなどから構成されている。
サイプレス セミコンダクタは2020年4月14日、オンライン会見を開き、IoT(モノのインターネット)製品の開発を容易に行える新たなソリューション「IoT-AdvantEdge」を発表した。プログラム可能なビルディングブロックを備えるマイコン「PSoC 6 MCU」を中核に、開発ツール「ModusToolbox」の新バージョンや、村田製作所などの無線通信モジュールと組み合わせたIoT開発キット、ライブラリの提供やオンライン開発コミュニティーを展開する専用Webサイトなどから構成されている。
IoT-AdvantEdgeは、“IoT”に“アドバンテージ”と“エッジ”を掛け合わせた新たなブランド名になる。サイプレス セミコンダクタ IoTコンピューティング&ワイヤレス事業部 プロダクト マーケティング シニア プリンシパルのアンドリュー・ハート(Andrew Hart)氏は「データ共有、プライバシー、状況認識、リアルタイム制御、コネクティビティという5つの観点で、エッジでのコンピューティングがより求められている。ここで言うエッジとはIoT製品のことだ」と語る。
このIoT製品の設計開発を、セキュアかつコスト効率良く行えることがIoT-AdvantEdgeの特徴だ。「接続(Connect)、コンピュート(Compute)、クリエイト(Create)の3点でコアとなる強みを持つ。IoT製品の開発は複雑になっているが、IoT-AdvantEdgeを使えば包括的に対処できる」(ハート氏)という。
IoT-AdvantEdgeの投入に合わせて、PSoC 6 MCUのラインアップを拡充した。Wi-FiとBluetoothの無線通信が可能な「PSoC 62」と、これら無線通信機能に加えセキュアブートなどにも対応した「PSoC 64」について、フラッシュ/SRAMの容量で2MB/1MBと512KB/256KBの品種を追加した。従来は1MB/288KBの品種のみだったので、高性能なIoT機器や、コストを抑えたIoT機器の開発など対応の幅が広がるとしている。
なお、セキュリティ機能が必要な場合にはPSoC 64を用いるのが最適だ。基準品からハードウェアベースのルートオブトラストを確保しており、上位品種であればArmのセキュリティ対応ファームウェアである「Trusted Firmware-M」も利用可能だ。将来的には、より高機能の品種を投入する予定であり、IP保護やハードウェアベースの多要素認証、ストリーミング暗号化などの他、機械学習やローカルポリシーの実装も可能になるという。サイプレス セミコンダクタ IoTコンピューティング&ワイヤレス事業部 マーケティング バイスプレジデントのブライアン・ベドロシアン(Brian Bedrosian)氏は「これらの機能を追加していく場合には、新たなIPコアの導入も必要になるだろう」と説明する。
バージョン2.1となったModusToolboxは、組み込み開発で広く用いられているIDE(統合開発環境)やコンパイラと連携した運用が可能だ。これにより、開発者自身が慣れ親しんだ開発環境を変更することなくIoT-AdvantEdgeを用いた製品の開発を行える。IoT製品の運用で重要なパブリッククラウドへの対応については、AWSの「AWS IoT Core」、Armの「Pelion」をサポートしており、今後マイクロソフトの「Azure」にも対応を広げる方針である。
IoT製品の開発をより容易にする仕掛けが、無線通信モジュールとの組み合わせによるIoT開発キットだろう。無線通信モジュールの大手である村田製作所の製品の他に、無線通信モジュール自身が認定を取得しているAzurewave Technologiesの製品を採用した。
サイプレス セミコンダクタ IoTコンピューティング&ワイヤレス事業部 プロダクト マーケティング ディレクターの丸山敏郎氏は「IoT-AdvantEdgeを使えば、スマートサーモスタット、スマートロック、スマートウォッチなどの開発を容易に行える。また、国内メーカー製の白物家電に無線機能が追加される事例が増えているが、そういった需要にも応えられるだろう」と述べている。
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