トマトの収穫量を3割増やし農薬量を2割減らす、NECとカゴメがAIで営農支援:スマートアグリ
NECとカゴメはAIと農業ICTプラットフォームCropScopeを活用した営農支援事業を、欧州のトマト一次加工品メーカー向けに開始する。事業開始日は2020年4月を予定。
NECは2020年3月31日、同社の農業ICTプラットフォームCropScope(クロップスコープ)とAI(人工知能)を活用した営農支援事業を、カゴメと共同で開始すると発表した。顧客は主に欧州のトマト一次加工品メーカーを想定する。またこれに伴い、NECとカゴメは戦略的パートナーシップ契約を締結した。事業開始日は同年4月を予定。
営農支援事業の中核となるのは、CropScopeとAI技術の組み合わせで実現した営農アドバイスサービスの販売だ。トマト一次加工品メーカーは同サービスを用いてトマト生産者の営農支援を実行できる。
CropScopeは人工衛星の衛星画像やUAV(無人航空機)が撮影した航空写真、土壌環境の測定用センサーなど各種センサーから収集したデータなどをもとに、トマトの生育状況や土壌の状態を可視化するサービスである。利用者は衛星画像から農作物の生育のばらつきや異常箇所を発見できる他、営農判断に必要となる土壌水分グラフを確認することができる。
営農アドバイスサービスではCropScopeが収集した情報に基づき、熟練栽培者のノウハウを学習させたAIが、水や肥料の最適な投入量と時期について利用者に指示を出す。各農家の栽培の技量にかかわらず収穫量の安定化が図れるとともに、施肥作業を効率化することで栽培コストも低減できる。実際に2019年にポルトガルの圃場で実施した実証試験では、窒素肥料の投入量を一般的な投入量より20%程度抑えつつ、1ヘクタール当たり約127トンと同国農家の平均収穫量の約1.3倍に当たる収穫量を達成した。
また、自社圃場だけでなく契約農家のトマトの生育状況を一括で管理できる農場管理・情報集約ポータルも用意した。トマトの生育状況を客観的データとして網羅的に把握し、収穫調整を最適化することができるという。
加工用トマトの生産量は今後も拡大が見込まれるが、一方で持続可能なトマト栽培を行うには生産者の減少や環境負荷低減など、さまざまな課題解決が今後より一層求められる。NEC コーポレート事業開発本部長の北瀬聖光氏は「当社は農業のデジタル化を加速することで、地球規模で広がる気候変動や食の安全に関する社会課題に対し、柔軟に対応する持続可能な農業を実現していく」とコメントしている。
将来的には日本国内で営農支援事業を展開することも視野に入れており、2020年に国内の数箇所で事業展開のための検証を開始する予定だという。
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