同じ動作で出たり引っ込んだりするノック式ボールペンの謎:身近なモノから学ぶ機構設計“超”入門(4)(2/3 ページ)
身近にあるモノを題材に、それがどんな仕組みで動いていて、どんな機構が使われているのかを分かりやすく解説する連載。今回は、末端のキャップを押し込むとペン先が飛び出し、もう一度押し込むとペン先が引っ込むノック式ボールペンの機構に迫る。
ノック式ボールペンの鍵となる3つの部品
分解できなかった部分をよく見てみると、(1)端面にギザギザが付いた黒い部品、(2)リブが付いた黒い部品、(3)筒の内側に掘られた溝の3種類の形状を確認できます。
写真では分かりにくいので、形状を似せた3Dデータを作ってみました(図3)。ここでは、この3部品を「1.ノック棒」「2.回転子」「3.外カム」と呼ぶことにします。
では、この3つの形状を使って、どのようにロック/ロック解除を繰り返しているのでしょうか?
もう一度、組み立てて動きをよく確認してみたいと思います。皆さんもお近くに透明の中身が透けて見えるノック式ボールペンがあれば、試しにカチカチと押してみてください。すると、中で何かが回っているのに気づくはずです。
回っているのは、先ほど分解したときに確認した「2.回転子」という部品です。そして、回転子の位置が、ペン先の出ているときと、収納されているときとで違うことが分かります。どうやらこの部品にロック機構の秘密が隠れているようです。
「回転子」の動き
それでは、回転子がどのような動きをしているのか、図を見ながら確認していきましょう。
図4は、ノック棒が押されたとき、回転子が外カムの中をどのように動いていくのかを順番に記したものです。3D形状だけだと少し見にくいので、円筒状の外カムを展開し、回転子のリブの位置を図の下半分に描いてみました。
(1)はボールペンの芯が収まっている状態の回転子の位置です。外カムの一番深い溝の中にリブが収まっています。(2)で回転子がノック棒に押されて外カムの斜面に掛かります。(3)ノック棒から指を離すとバネの力で回転子が押し戻され、外カムの斜面を滑りながら回転して浅い溝に収まります。このときペン先が出てロックされている状態になります。(4)もう一度ノック棒を押すと回転子が溝から外れて、また外カムの斜面に掛かります。指を離すと斜面を滑りながら回転して(1)の位置に戻ります。
このように、回転子が回転しながら外カムの異なる高さの溝に収まることで、ペン先が出た状態でロック⇔ロックを解除して元の位置に戻る、という動作を繰り返しています。
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