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30年前に予見した「有人化工場」、機械データサービス定着を目指すシチズンの挑戦製造業×IoT キーマンインタビュー(1/4 ページ)

製造業においても「モノからコトへ」のサービス化が加速する中、30年前からデータサービスのビジネス化に取り組んできたのが工作機械メーカーのシチズンマシナリーである。なぜ30年前からデータサービスに取り組んできたのか。現在はどのような状況なのか。データサービス事業を主導するシチズンマシナリー 執行役員の柳平茂夫氏に話を聞いた。

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 IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)技術の進展により、製造業が従来の「モノ売り」からデータを基軸とした「コト売り」へビジネスモデルを変革する動きが進んでいる。こうした中で30年前からこうした「データ」を基軸とした、新たなモノづくりの世界を描き「デジタルサービス」の定着に向けて試行錯誤を続けてきたのが工作機械メーカーのシチズンマシナリーである。

 まだ通信技術も十分ではない状況の中、なぜ30年前にデータを中心としたデジタルサービスを開始したのか。また現在はどのような取り組みを進めているのだろうか。デジタルサービス事業を主導するシチズンマシナリー 執行役員の柳平茂夫氏に話を聞いた。

本連載の趣旨

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ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
⇒連載のバックナンバーはこちらから


1990年に打ち出した「有人化工場」のコンセプト

MONOist シチズンマシナリーではとても早くから工作機械においてデータを利用したデジタルサービス展開に取り組んできたと聞きました。当時は「モノの価値」が重視される環境だったと思いますが、なぜデジタルサービスに取り組み始めたのでしょうか。

柳平氏 シチズンマシナリーは、シチズン時計で時計を製造するために作った工作機械を外販する中で生まれた企業だ。その後ミヤノとの経営統合などを経て今の姿となった。創立は1930年である。

 データを中心としたデジタルサービスを開始するきっかけとなったのが、60周年となる1990年に開催されたプライベートイベント「CFA60」である。「CFA」はそれまでの商談会とは異なり、モノづくりの将来ビジョンを示し、その中でシチズンマシナリーの果たす役割や機器開発の方向性を示すというコンセプトで行われた(※)

(※)「CFA」はその後、2001年(CFA70)、2005年(CFA75)、2015年(CFA85)が開催されている。

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シチズンマシナリー 執行役員の柳平茂夫氏

 その将来ビジョンとして描かれたのが「有人化工場」というコンセプトだ。当時のモノづくりは自動化が進んだ時期で「無人化工場」が大きな注目を集めていた。ただ、われわれは「人」が工場の中で重要な役割を果たすということには変わりないと考えており、あえて「有人化」を訴えた。当時のそのままのように人が必死になって働くのではなく、人が中心でありながら、効率の良いモノづくりを作り上げていくという世界を描いたのだ。

 当時の資料を見ると、人の1日の働き方などが描かれ、そのコンセプトは今に通じるものが数多くある。例えば、資料には、自動運転を続ける工場内機械に対し、人は朝出勤するとまず、機械や設備の稼働状況や稼働実績を確認するところがあるが、これは今の稼働監視システムそのものである。

 また、生産計画に対し、機械を動作させるプログラムは、機械メーカー(シチズンマシナリー)に対して、電話回線(ネットワーク)で接続し、図面と条件を設定するだけで、自動でシチズンマシナリー側から機械にプログラムが書き込まれるという表現があるが、これはCAMによるNCプログラム作成を遠隔からインストールするということを指し示している。また、トラブルが起きた場合はリモートメンテナンスを行うなど、今使われてたり開発が進められていたりするさまざまな技術が30年前には既に描かれていたことになる。

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「CFA60」の資料で、コンセプトとして描かれた「近未来工場でのひとの仕事」(クリックで拡大)出典:シチズンマシナリー

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