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トヨタから副社長が消え執行役員に一本化、「チーフオフィサー」を本格運用へ製造マネジメントニュース

トヨタ自動車は2020年4月1日付で実施する役員体制の変更について発表。副社長と執行役員を同格として執行役員に一本化するとともに「チーフオフィサー」「カンパニープレジデント」「地域CEO」「各機能担当」に分け、それぞれの役割をより明確化させる。

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 トヨタ自動車は2020年3月3日、同年4月1日付で実施する役員体制の変更について発表した。副社長と執行役員を同格として執行役員に一本化するとともに「チーフオフィサー」「カンパニープレジデント」「地域CEO」「各機能担当」に分け、それぞれの役割をより明確化させる。ただし役割は固定せず、その時々の適任者を配置していくという。

 2月末時点で、同社の事業執行体制は、社長の豊田章男氏を筆頭に、副社長が6人、執行役員が18人、そしてエグゼクティブフェローのギル・プラット氏とシニアフェローのジェームス・カフナー氏から構成されていた。4月1日からは、豊田氏を頂点に、21人の執行役員とプラット氏、カフナー氏で事業を執行していくことになる。なお、今回の発表に併せて、これまで副社長を務めてきたディディエ・ルロワ氏と吉田守孝氏の退任も発表されている(ルロワ氏は取締役は継続)。2019年12月にはジェームス・レンツ氏の退任も発表されており、執行役員の総数は3人減となる。

副社長に代わって「チーフオフィサー」が前面に

 副社長に代わって明確に位置付けられるのが、執行役員の役割の1つである「チーフオフィサー」だ。これまでは、社長や副社長、執行役員という役職が“主”で、CxO(Chief x Officer)職は“従”として担当分野を示す形で利用されてきたが、4月1日からはCxOが役職の前面に出ることになる。

 チーフオフィサーには、2020年3月末までさまざまなCxOを務めてきた副社長4人の他、新たに2人の執行役員が就任する。現副社長のうち、代表取締役も務める小林耕士氏は、Chief Risk Officerを継続担当する。総務人事本部の本部長や工場統括を務めてきた河合満氏は、Chief Monozukuri OfficerとChief Human Resource Officerに就任する。CTOを務めてきた寺師茂樹氏は、Chief Competitive OfficerとChief Project Officerに就任。友山茂樹氏は、これまでのChief Information Security Officerを名称変更したChief Information & Security Officerを継続するとともにChief Production Officerに就任する。

 新たにチーフオフィサーに就任するのは近健太氏と前田昌彦氏。近氏はこれまで小林氏が務めていたChief Financial Officerを引き継ぐとともに、経理本部の本部長と先進技術開発カンパニーのフェローも継続する。前田氏は、寺師氏が務めていたCTOに就任する。これまで務めてきたパワートレーンカンパニーのプレジデントも兼任する。

 「カンパニープレジデント」は、これまでもあった役職であり担当の変更もほぼない。先進技術開発カンパニーは奥地弘章氏、Mid-size Vehicleカンパニーは中嶋裕樹氏、CVカンパニーの小木曽聡氏、Lexus Internationalの佐藤恒治氏、コネクティッドカンパニーの山本圭司氏が、各カンパニーのプレジデントを継続して担当する。

 「地域CEO」もほぼ変更はない。ヨハン・ファン・ゼイル氏が欧州本部、上田達郎氏が中国本部、村上晃彦氏が東アジア・オセアニア・中東本部の本部長に留任する。なお、北米本部の本部長には、退任するジェームス・レンツ氏に代わり小川哲男氏が就任する。

 「各機能担当」もほぼ変更はない。朝倉正司氏がTPS本部と生産企画本部の本部長を、岡田政道氏は生産企画本部の副本部長と元町工場、三好工場、明知工場の工場長を兼任する。白柳正義氏は渉外広報本部と調達本部の本部長を、宮崎洋一氏は事業業務部や営業業務部、販売支援部などの担当を、佐藤康彦氏は国内販売事業本部の本部長を継続する。今回の人事で唯一の新任執行役員となる桑田正規氏は、副社長の河合氏が務めてきた総務・人事本部の本部長に就任する。

 組織改正では、デンソーとの電子部品事業の統合や、パナソニックと合弁で立ち上げる車載用電池会社のプライムプラネットエナジー&ソリューションズの発足に伴い、パワートレーンカンパニーにおける事業移管や領域廃止を行う。カンパニー傘下の広瀬工場内にある工務部、品質保証部、エレクトロニクス生技部、エレクトロニクス製造部はデンソーに移管される。また、電池事業領域は廃止し、EHV電池設計部はカンパニー直轄となり、電池材料技術・研究部、電池生技部は合弁新会社へ移管される。

豊田氏「階層を減らして次世代のリーダーたちと直接会話する」

 豊田氏は今回の体制変更について「2009年の社長就任以来、大規模リコール問題や東日本大震災など数々の難局に直面し、それを乗り越える中で、私自身が感じたことがある。それは、『トヨタとは何か』『トヨタらしさとは何か』という原点に立ち戻ることの大切さだ。これまでの経験を通じて、私が再認識したことは、トヨタで働く者として守るべき基本姿勢は『素直、正直。ごまかさない、隠さない』ということであり、トヨタの競争力の源泉はトヨタ生産方式(TPS)と原価のつくりこみであるということだった。しかし、成功体験を積み重ねる中で、こうした基本となるモノの見方・考え方が弱くなり、『トヨタらしさ』が失われてきているのではないかということも痛感した。トヨタが継承してきた良いところは一層強化し、充実していく。一方、これまでの悪い慣習は、私の代で一気にやめて、『トヨタらしさ』を取り戻す。それをしなければ、次世代にタスキをつなぐことはできないというのが私の正直な気持ちだ」と述べる。

 その上で「これまでも役員人事や組織改正については、『適材適所』の考え方に基づき、従来の慣例にとらわれることなく、柔軟に実施してきた。今回の体制変更についても、さらに階層を減らすことによって、私自身が、次世代のリーダーたちと直接会話をし、一緒に悩む時間を増やすべきと判断した。次世代のために、今、私がやらなければならないことは、何よりも『トヨタらしさ』を取り戻すことだと思っている」(豊田氏)という。

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