AUTOSARの最新リリース「R19-11」とは(中編):AUTOSARを使いこなす(15)(2/4 ページ)
車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載の第15回では、前回に引き続き、2019年12月に一般公開されたAUTOSARの最新リリース「R19-11」について紹介する。
Project Objectives(PO)での変更
AUTOSARの文書体系はさまざまな変遷を経てきましたが、R19-11現在は、最上位の目的を記述したFO RS Project Objectives(PO)を頂点とし、それをFO RS Mainなどが段階的に具体化していくという構造を取っています(R4.0.3でRS MainからRS POを抽出し、その内容がR4.4.0まで維持されてきました)。
今回、そのPOが見直されました。項目の追加削除もありますので、方針転換かと一瞬ドキッとしたのですが、よく見てみると文言の見直し程度でした。そのためか、TR Release Overviewでも第5章 Release historyにそっと掲載されているだけです。
内容は、意訳になりますが、「天然資源の持続可能な利用の支援」(RS_PO_00006)、「自動車用ECUの基本ソフトウェア機能の標準化」(RS_PO_00008)が削除され、「Non AUTOSARシステムとのデータ交換への対応」(RS_PO_00010)が追加されました。また、RS_PO_00001、RS_PO_00002、RS_PO_00003およびRS_PO_00007も文言が修正されています。
従来のRS_PO_00008は、基本ソフトウェア機能といっても、BSWやFCレベルで実現されるような「どのECU種別でも必要とするもの」ならともかく、ECU種別固有、各社固有のものまでも標準化スコープに入れられなくはなかったので違和感はありました(確かに、過去のトレーニングの中ではそんなご質問もいただいたことがあったように思います)。ですので、この点について明確化するために削除されたのではないかと推測します。
また、「requirement」が満たすべき条件(例:ISO 26262-8:2018 Clause 6やINCOSEで示されているもの)からすると、少なくともRS_PO_00006は、AUTOSARの標準化活動の枠組みでverifiableか否かという点で疑問がありますし、従来のRS Mainで引き当てられていた項目との対応関係にはかなり疑問が多かったので、削除するのは自然だと考えます。
新規追加されたRS_PO_00010は、まだRS Mainの項目には引き当てられていませんが、ユースケースとしては、従来も行われてきた「(non-AUTOSARの)インフォテインメントECUとの通信」が挙げられており、順当なところでしょう。
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