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「ひとりメーカー」Bsizeが生き残ったシンプルな理由ポスト・メイカームーブメント(1)(4/5 ページ)

2010年代に起きた「メイカームーブメント」を振り返るとともに、2020年代に始まる「ポスト・メイカームーブメント」の鍵となる企業や技術、コミュニティーを紹介する連載。ハードウェアの量産や経営に苦労するスタートアップがいる中、モノを作り続け、成長につなげることができているのはなぜか? 日本のメイカームーブメントの先駆けとして知られ、当時「ひとりメーカー」としてメディアにも大きく取り上げられた、Bsizeの八木啓太氏にお話を伺った。

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メーカーの天井超えを狙う「GPS BoT」

 そして、八木氏が「Bsizeの転換期となった」と語ったのが、2017年に発表したGPS BoTだ。GPSと3G回線を内蔵した端末を子供に持たせることで、位置情報をモニタリングできる端末だ。端末は4800円(税別)、月額の利用量は480円とリーズナブルな価格と安心につながるサービス体験が受け入れられ、小学生の保護者の間で急速に広がっている。

GPS BoTについて
Bsizeが2017年に発表した「GPS BoT」。それまで売り切りのハードウェアを開発していた同社では、初めてのIoT機器でありサブスクリプションサービスとなる [クリックで拡大]

 「デザインとテクノロジーで社会に貢献する」というBsizeのミッションを最大化させるためには、切実な社会課題に対して、多くの人に貢献できるようなプロダクトを届ける必要があると考えた。折しも八木氏自身に子供が産まれたこともあり、子供が安全に暮らせるような社会を作りたいという思いを抱くようになり、GPS BoTの開発につながっていった。

 シンプルで誰でも簡単に使えるものを、リーズナブルな価格で届ける必要がある。データの処理をクラウドが担うことで、ハードウェアの役割と原価は大きく下げることができる。通信回線は数年かけて検証したが、各種通信技術の将来性と、当時の通信品質、例えば、トンネルや地下でも比較的途切れず確実に見守れることなどから、3G回線が最適と判断した。ちょうどMVNOの解禁が始まっていたことも理由だった。端末のインタフェースも何度も試作と検証を重ねた。当初は物理ボタンを用意していたが、子供が誤操作やいたずらで押す可能性がある他、何より押した意図が伝わらず、かえって不安を生み出してしまうため、機能から外した。

 端末のインタフェースをシンプルにした代わりに、充実させたのはクラウド側のAI(人工知能)だ。学校や自宅、習い事などの生活パターンを学習し、通常とは異なる位置や行動パターンを検知した際、子供の操作によらず、保護者に通知が飛ぶ仕組みを実装した。開発には、これまでのプロダクトで培ったノウハウがフルに生かされている。

 「ハードウェアの開発にはどうしても時間がかかります。それをどうやって短縮するかは、これまでの経験が生かされる部分だと思います。試作を何回も高速に回し、早いうちに失敗して軌道修正できる時間を確保したり、時間をかけて粘るタスクと、時間をかけない方がよいタスクを切り分けたりと、できるだけ早期にちゃんと役立つものを世に送り出すことを目指しました。また、製品の利用状況やユーザーの声を基に、改善すべきポイントを見定めて、バージョンアップによって完成度を高めていくことも重要です。GPS BoTの開発では、そのようなサイクルをしっかりと回すことができたと自負しています」(八木氏)

 2020年3月にはGPS BoTの新モデルを発表。さらなる需要の増加を見越して、サプライチェーンの刷新も検討しているという。

 「GPS BoTを発表してから類似品が多数出てきました。それだけ評価いただき、業界の新しい基準となったことはありがたいですが、いずれも表層的な模倣にすぎず、サービスの肝であるAIやクラウドの機能は追随を許していません。私たちは、これまで蓄積してきた膨大なデータやユーザーの声から、キラーコンテンツは何か、つまり保護者の安心につながるKPIが何なのかを誰よりも深く理解しているつもりです。GPS BoTの新モデルでは、安心/安全につながる機能をさらに強化することで、利用者の満足度を飛躍的に上げたいと考えています」(八木氏)

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