Armが「PSA Certified」に込めたセキュアMCU普及への意気込み:Arm最新動向報告(8)(4/4 ページ)
Armが開催した年次イベント「Arm TechCon 2019」の発表内容をピックアップする形で同社の最新動向について報告する本連載。今回は、セキュアなMCUの開発に向けた認証制度「PSA Certified」を紹介する。
MCU向けのファームウェアもセキュリティ対応
ところでセキュリティの対象はハードウェアだけでなく、ファームウェアの対応も必須である。これに向けてTrusted Firmware-M(Cortex-M用Firmware)が提供されるが、これはオープンソースプロジェクトであるTrustedFirmware.orgのものが利用される(図12)。
もっとも、TrustedFirmware.org自身、もともとはArmが立ち上げたものではあるのだが、面白いのは当初はCortex-A向けの「TF-A(Trusted Firmware for A-profile systems)」が先行していたことだ。2013年にlinaroがTF-AのVersion 0.2を公開、これを基に現在のTF-Aが提供されており、後追いの形でTF-Mが追加された形だ。TF-Aは、ArmのTrustZoneに対応したFirmwareであり、だからCortex-Mが後追いになったのはまぁ当然かもしれない。現状TF-Mも、PSA Certifiedに対応したものになっている(図13)。
こんな具合に、実装とテストの環境を整えて、PSAを(MCUベンダーその他パートナーが)容易に利用できる様にしよう、と工夫してきたわけであるが、これへのもう一押しとしてArmが2018年から提供している設計スイートに「Arm Corstone」がある(図14)。最初に発表されたのはCorstone-100とCorstone-200だが、2019年に入ってさらにCorstone-101/202/700が追加された(図15)。こうしたIPを充実させることで、セキュアなMCUをより広範に普及させたいというArmの意気込みが感じられる。
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