コカ・コーラのパッケージデザインの方向性とは、味覚だけでなく五感に訴える:デザインの力(1/2 ページ)
「JAPAN PACK 2019(日本包装産業展)」の特別講演に、コカ・コーラ 東京研究開発センター プリンシパルエンジニアの岩下寛昌氏が登壇。「コカ・コーラの考えるパッケージデザイン−飲料におけるパッケージの重要性と容器デザインの考え方−」をテーマに、飲料パッケージのデザイン、開発における重要な視点や要素などを紹介した。
包装プロセスの総合展示会「JAPAN PACK 2019(日本包装産業展)」(2019年10月29日〜11月1日、幕張メッセ)の特別講演に、コカ・コーラ 東京研究開発センター プリンシパルエンジニアの岩下寛昌氏が登壇した。岩下氏は「コカ・コーラの考えるパッケージデザイン−飲料におけるパッケージの重要性と容器デザインの考え方−」をテーマに、飲料パッケージのデザイン、開発における重要な視点や要素などを紹介した。
「他のブランドが提供できないマインド的な価値を意識」
コカ・コーラ(The Coca-Cola Company)は米国のアトランタに本社を置くグローバル企業だ。炭酸飲料の「コカ・コーラ」をはじめ世界約200カ国で製品を販売しており、同社の飲料は1日に19億本以上も消費されているという。高いブランド力を背景に、「世界中の人々と体にさわやかさを提供する」「ブランドや事業活動を通じて人々が楽しく前向きな気持ちになれるひと時を提供する」「携わる全ての分野において価値を創造し、変化を生み出す」などの使命感を持ち事業を進めている。
その飲料パッケージの開発理念として軸となるのは「サステナブルパッケージ」であり地球に、人に優しいが基本となる。これに消費者の声などを反映していく。同社は、環境意識の高まりに合わせて、廃棄問題や空容器のリサイクルなどに対応した「廃棄物ゼロ社会を目指す」など容器の2030年ビジョンを制定しており、容器ごみ、海洋ごみの削減に貢献する方針を打ち出している。さらに、誰にでも使いやすいユニーパーサルデザインも一つの指針となる。これに、企業ミッションである「さわやか、前向きな気持ち」を提供できるような心躍るデザインというものが加わり、「これら3つの要素を考えながらパッケージづくりを行っている」と岩下氏は述べる。
飲料のパッケージにおいて重要となる視点や要素は「Brand Equity」「Emotion」「おいしく感じる」「Innovation/Habit(習慣・癖) Change」などがある。パッケージはブランドにひも付いた価値の一部であり、例えば、ボトルのフォルムを見ただけでコカ・コーラと分かり、飲みたくなる人もいるという究極のブランドを実現した。
パッケージを考える上では、味覚だけでなく、視覚や聴覚、香り、手触りなど五感に訴えることを重要視しており「他のブランドが提供できないマインド的な価値を意識して組み立てている」(岩下氏)という。また、Emotionに関しては、炭酸飲料は刺激があるので、気分転換、やる気が出るという、前向きな気分を最終的に提供できれば、それが商品価値となる。加えて、個人が味を判断するには、視覚情報が大きく、見た目は記憶や経験にひも付いている。そのため、パッケージの効果はおいしさをどう感じるかにも大きく寄与している。
さらに「習慣を変える、(新たに)習慣を起こさせる」ということが重要となる。国内の飲料業界は、炭酸飲料、ジュースだけでなく、水、お茶、コーヒーなど、多種類の商品の登場により市場が右肩上がりの状況だ。例えば、コーヒーだと冷たいものだけでなく、温かいものがあり、それらを販売するために自販機が改良され、それとともにパッケージも工夫されている。炭酸飲料は、キャップを開けたらすぐに一気に飲みたいが、お茶や水は時間をかけて少しずつ飲むというように、飲用シーンの違いが出てきたことなどもパッケージのデザインに影響を与えているようだ。低温度で充てんできるようになったため、新しいパッケージデザインができ、加えて1996年の容量500ml以下の小型ペットボトルの解禁でパッケージのサイズも種類が増えるなど、こうした取り巻く環境の変化に対応する技術革新が必要となる。
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