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学生フォーミュラの「デザイン審査」で何が問われるか、知っていますか車・バイク大好きものづくりコンサルタントが見た学生フォーミュラ2019(2/4 ページ)

2019年の学生フォーミュラレポートも今回で最終回。実は今大会開催の1カ月ほど前に、2012年大会で横浜国立大学フォーミュラプロジェクトのリーダーを務め、その後中小企業の雄、由紀ホールディングスで開発の仕事をされている曽根健太郎氏から「デザイン審査員さんにインタビューしませんか?」といううれしいお話を頂いた。

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速いマシンは美しい

S 今回、京都工芸繊維大学はカウルをきれいに作ってきました。私はこのコラムでいつも「速いマシンは美しい」と言い続けているのですが、昨年(2018年)までの京都工芸繊維大学のピットインタビューでは「マシンが美しくなくてごめんなさい」と話してくれていました(笑)。

K 京都工芸繊維大学も上位に入るようになって、直接速さには関係のない「美しさ」にも気を遣うような意識に変わってきたのではないでしょうか。やはり本気で優勝争いをしようと思ったら静的審査で好成績を収めなければなりません。今回は残念ながらエンデュランスでリタイアでしたが、静的審査は過去最高成績だったんじゃないかなぁ?

K 大阪大学もエンデュランスリタイアでしたが、静的審査(デザイン2位、コスト1位、プレゼンテーション18位)と走り切れた動的審査だけでも上位に入ってくるのではないでしょうか(大阪大学の総合順位は13位で、エンデュランス初FINAL6で11位の成績を収めた静岡理工科大学は総合14位)。

S 大阪大学のピットインタビューでいつも驚かされるのは、まるで自動車メーカーのチーフエンジニアと会話している雰囲気になることです。

K デザインファイナルに進んでくるチームのメンバーはみんなそういう感じですよ。逆にこっちが「あ、そうなんですか」って納得しちゃうシーンもあります。今回、大阪大学のマシンがリタイアして戻ってきた時に、OBがすぐに故障箇所を分析して、「カーボンロッドの欠損かぁ、安全率が低かったんちゃうか?」なんて対策会議で盛り上がっちゃう。さすが阪大、違うなぁと思いました(笑)。

デザインファイナルに進むには

S お聞きしたいことを整理してきたのでお答えをお願いします。まずはデザイン審査で最も重視する点は?

K 先ほどの繰り返しになりますが、設計プロセスです。なぜこういう設計にしたの? それをどう検証したの? という質問になりますね。

S それは設計の妥当性ということですよね?

K そうです。例えば中国の大学は素晴らしい部品を使ってすごいマシンを作ってくるのに、デザインファイナルに進めない。「なぜだ?」と問われたこともあるのですが、もう何年も来ていただいているので、設計プロセス重視ということは理解していただきました。ですから最近はデザイン審査でも上位に来ていますよね(※1)

(※1)中国 同済大学はICV(内燃機関)、EV(電気自動車)の両チームが同率8位

S 確か昨年(2018年)はデザインファイナルの3チーム中2チームが海外勢でした(※2)。ところで影山さんは審査員を何年やられているのですか?

(※2)1位:オーストリアU.A.S.GRAZ、2位:名古屋大学、3位:中国 同済大学

K 今回でもう11回目になります。私が審査を始めたころの大会に学生として参加した人が、自動車業界に就職し、今審査員をやっているなんてことになっています。

S そういえば、今回エンデュランスのコントロールタワーで実況解説されていたのは、上智大学のスーパードライバー藤本さんでしたよね。OBがこの大会を支えているんだ。長期間デザイン審査をされていて、大学生の設計レベルの変化はお感じになりますか?

K 実際のモノのレベルが急激にレベルアップしているわけではないのですが、設計レベルは上がっています。それは進化した設計ツールをしっかり使いこなせているということだと思います。例えば解析ツールなどですね。でも、そういうツールに頼らずしっかりクルマ作りをしてくるチームもあります。例えば専門学校のNATS(日本自動車大学校)はここ10年でTOP10入り7回です。

S 京都工芸繊維大学を見ていると、自分たちのデータはもちろんのこと、他チームの成績もPCに入力してシミュレートしています。もうレーシングチームのマネジメントですよね。

K はい、そういうデータをきちんと次の設計にフィードバックしていく。この点も設計プロセスで重要なことです。

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