学生フォーミュラの「デザイン審査」で何が問われるか、知っていますか:車・バイク大好きものづくりコンサルタントが見た学生フォーミュラ2019(1/4 ページ)
2019年の学生フォーミュラレポートも今回で最終回。実は今大会開催の1カ月ほど前に、2012年大会で横浜国立大学フォーミュラプロジェクトのリーダーを務め、その後中小企業の雄、由紀ホールディングスで開発の仕事をされている曽根健太郎氏から「デザイン審査員さんにインタビューしませんか?」といううれしいお話を頂いた。
2019年の学生フォーミュラレポートも今回で最終回。実は今大会開催の1カ月ほど前に、2012年大会で横浜国立大学フォーミュラプロジェクトのリーダーを務め、その後中小企業の雄、由紀ホールディングスで開発の仕事をされている曽根健太郎氏から「デザイン審査員さんにインタビューしませんか?」といううれしいお話を頂いた。
私はクルマとバイクが大好きではあるものの、メカニズムに精通しているわけではないし、そもそも製造畑なので、設計者ではない。しかしこんなチャンスはめったにないし、学生の皆さんに次回以降のデザイン審査対応で少しでもお役に立てばと、臆することなくお願いすることにした。
デザイン審査内容とは?
まずは学生フォーミュラ公式サイトから「デザイン審査」の概要をおさらいしておこう。
事前に提出した設計資料と車両をもとに、どのような技術を採用し、どのような工夫をしているか、またその採用した技術が市場性のある妥当なものかを評価する。具体的には、車体および構成部品の設計の適切さ、革新性、加工性、補修性、組立性などについて口頭試問する。
審査配点としては、150点ととても高い配点になる、デザイン(設計)の審査。ここでも口頭質問があります。ただフォーミュラカーを製作しただけでは評価はされません。いかに他のチームと違う優れたフォーミュラカーを製作するのか、そのセンスが問われます。
さて、この記述だけでは私はどう対応していいか、さっぱり分からない。もちろん大会に出場している学生さんたちは先輩から受け継いだ情報、ノウハウを生かして審査に臨むのだろうが、実際の審査員の頭の中を少しでもお伝えできれば幸いだ。
審査員にインタビュー開始
エンデュランス審査の最終組がゴールしたことを見計らうように降り出した雨を避けて、プレス用に用意されたテントの下でインタビューを始めた。話をお聞きするのは神奈川県で設計事務所「オートコムデザイン」を営む影山邦衛氏。もちろん曽根氏にも同席頂いた。
関(以下S) お疲れさまでした。いやぁ、エンデュランス面白かったですね!
影山氏(以下K) そうですね。今年(2019年)は静的、動的審査の総合点で最終日まで激戦でした。優勝は多分名古屋工業大学ですかね……横浜国立大学はまた2位かな……(と曽根氏の方を見てほほ笑む)。
曽根氏(以下SN) チャンスが来ても勝ち切れない横浜国立大学ですね……(苦笑)
K 以前0.6点差で2位という時がありましたよね? あの時も私がデザイン審査を担当していたので、どこかの審査ポイントで1点高く評価していたら、横浜国立大学が逆転優勝だったのかと……。
SN 当然デザイン審査もそういうとことに絡んできますよね。
K はい、だからなんだか責任感じちゃうときありますよ。
S でもそれは静的審査員の方々は皆さん感じていらっしゃるのでしょうね。動的審査はタイムではっきり点数付けができますが、プレゼンテーションの審査なんて難しいですよね。実は先ほど京都工芸繊維大学のリーダーにインタビューした時に、影山さんへのインタビューにはとても興味があると言っていましたよ。
K 今年(2019年)のデザイン審査は名古屋工業大学が18位、京都工芸繊維大学が惜しくもデザインファイナル逃しの4位で、点差が32点あったんですよ。
審査のポイントはVプロセス
K 静的審査といっても、もちろん競技です。与えられた30分でいかに自分たちのマシンの独自性、設計思想を伝えられるかの勝負です。例えば「カーボンモノコックだから良い」のではなく、自分たちの設計プロセスをきちんと説明できるかなんですね。
S 審査時には図面を見ながら審査するという形態なんですか?
K 事前(大会の約2か月前)にデザインレポートが提出されていて、私たちはそれを相当に読み込んでいます。そして大会までには走らせて、いろいろとデータを取っていき、資料が増える。そのデータで設計コンセプトの妥当性を証明しなければなりません。いわゆるVプロセスです。それができていることを評価します。ということは、クルマを早く完成させて検証しないと、デザイン審査ももちろんですが動的審査で必ず問題が出るんです。
K 今回、芝浦工業大学は冷却水経路トラブルでエンデュランスリタイアとなりました。事前のデザインレポートとレイアウトが変わっていたんですよ。実際その経路を見てみると、透明なチューブの中に気泡が見えました。エアを噛んでいるんですね。多分設計変更後の検証、つまり走り込みが足りなかったのではないと推測しています。
K ほとんどのチームは3支部合同走行会(大会の1カ月ほど前に開催される)では、まだカウルが付いていない状態なんです。カウル全体で数kgありますよね? 総重量200kgのマシンの外側に例えば5kgのカウルが付いたら、操縦性が変わって当たり前ですよね? だからいかに早くマシンを完成させるかが重要なんです。京都工芸繊維大学や横浜国立大学は、4〜5月の支部走行会の時点でしっかりカウルを装着していました。
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