日本のAUTOSAR関連開発:マニュアル頼りで大丈夫? 外注化は今のままで持続可能?:AUTOSARを使いこなす(13)(1/3 ページ)
車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載の第13回は、第11回と第12回で筆者が提案したAUTOSARに関するスキルや研修に関する取り組みの現状について報告する。マニュアルを基にした運用や外注の活用本当に問題はないのだろうか。
はじめに
今回はまず、連載第11回および第12回で触れました、スキルや研修に関する取り組み(教育カリキュラムの共通化)のご提案のその後について現状をお知らせいたします。
なお、次回以降は、2019年11月28日にリリースされた最新版のAUTOSAR R19-11の現状や変更内容についてご紹介していきたいと思います※1)。
※1)実は当初はR19-11の内容のご紹介を予定しておりましたが、2019年12月13日時点ではAUTOSAR会員向けのみのリリースとなっており、AUTOSARの公式Webサイトでの一般公開には至っておりませんので、予定を変更いたしました。
スキルや研修に関する取り組み(教育カリキュラムの共通化の活動)の現状について
前回告知させていただきました、スキルや研修に関する取り組みのその後について現状をお知らせいたします。
この取り組みに関しては、残念ながらご参加のお申し出が非常に少なかったため、開始は当面見送ることにいたしました。
お申し出をいただきました少数の皆さまには心より御礼申し上げます(限られた有志で検討は続けますので、個別に2020年1月以降ご連絡差し上げます)。
当初考えていたのは、以下のような活動内容です。筆者が見てきた世界についてご紹介しつつ、皆さまがご覧になってきた事例と組み合わせてより確実なものにする、というような進め方を考えておりました。
- 実際に機能する役割分担の境界に関する共通認識の確立
- 従来の境界線とは必ずしも一致しませんので、AUTOSARを利用したプロジェクトの経験や知識をもとに、再構築する必要があります(全てが変わるわけではありません)
- また、境界線を引くからには理由(目的)があるはずですので、それを明らかにしていくことも必要になるでしょうし、活用のヒントはそこにもたくさんあるはずです
- 上記の担当範囲のそれぞれで必要となるAUTOSARおよび周辺の知識の洗い出し
- 後述のように、「何でもかんでも盛り込む」ということですと、教育/研修にはいくら時間があっても足りません
- 筆者の研修をお受けになった方々はお分かりかと思いますが、AUTOSAR Classic Platform(CP)の入門編の研修資料は、本編と予備スライド込みで1000ページにもなろうとしており、その増加には飽和傾向が見えません(皆さまからこれまでにご質問いただいた内容をまとめただけでもです)
- また、詰め込んだところで、使わない知識は忘れていってしまいますから、「AUTOSARの知識/研修」という大きなくくりで扱うのではなく、「AUTOSARのxxxという作業や役割で必要になる知識/研修」という絞込みをできるようになる必要があるのです(「これも知っている、あれも知っている」という資格コレクター的に星取表を埋めていくような余裕はないはずですので……)
- 研修資料の基本構成
- トピックのグループごと、また、役割/立場ごとに説明の仕方を変える必要があると考えています
- 例えば、BSWに関する説明について考えてみると、そのモジュールが上位/下位のレイヤーに提供するサービス内容は必須でしょう。しかし、そのモジュールが持つAPIとなると立場によっては知る必要がなくなります。例えば、SW-C開発者の立場であれば、RTE直下のBSWモジュール以外のAPIは必ずしも必要ありません(ex. Can_Write() APIやその引数など)(図1)。また、前々回にも述べましたように、テスト担当者やプロジェクトマネージャーであれば、必要な知識はさらに異なります(表1)。こういった取捨選択に関する共通認識があれば、「このカリキュラムの研修を受けた人は、この知識を持つはず」とおおよそ把握できるようになると考えています
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