国際標準化が加速する医療機器サイバーセキュリティ、AI活用の前提条件に:海外医療技術トレンド(53)(4/4 ページ)
本連載では、ソフトウェア・アズ・ア・メディカル・デバイス(SaMD)の国際協調に向けた取り組みを紹介しているが、サイバーセキュリティでも同様の動きが本格化している。この医療機器サイバーセキュリティは、医療分野におけるAI(人工知能)活用の前提条件になってきそうだ。
医療機器サイバーセキュリティの後に控えるAI規制の国際標準化
図2は、2019年9月16〜19日、ロシアのエカテリンブルクで開催されたIMDRF第16回管理委員会会議において、医療機器サイバーセキュリティ作業部会が示した、医療機器サイバーセキュリティ原則に関する今後の作業計画とマイルストーンである(関連情報、PDF)。
図2 医療機器サイバーセキュリティ原則の今後のi作業計画とマイルストーン(クリックで拡大) 出典:International Medical Device Regulators Forum(IMDRF)「MEDICALDEVICECYBERSECURITY WORKINGGROUPUPDATE」(2019年9月16-19日)
これによると、医療機器サイバーセキュリティ作業部会は、2019年12月までにパブリックコメントのレビューおよび取りまとめを行い、翌2020年2月には医療機器サイバーセキュリティ原則最終版を提出して、同年3月にシンガポールで開催予定の管理委員会会議で審議される予定になっている。
2019年9月のIMDRF管理委員会会議では、医療機器サイバーセキュリティ原則草案に関する審議などに加えて、AI(人工知能)ベースの医療機器に関連するワークショップが開催された。現在開発中の医療AI製品の多くがSaMDモデルを採用している一方で、IMDRFの医療機器サイバーセキュリティ原則草案や主要各国・地域の医療機器サイバーセキュリティガイドラインはSaMDまで踏み込んだ内容となっている。
今後、医療機器サイバーセキュリティ原則の順守が、国境を超えた医療AI製品規制の前提条件となる可能性が高い。マルチステークホルダー型の医療機器サイバーセキュリティ・エコシステムについては、医療AIイノベーションを加速させる共通プラットフォームとして認識すべきだろう。院内治療から外来治療、在宅治療へと拡大するにつれて、医療AIのメリットとサイバーセキュリティのリスクのバランスをどう保つかが、高度医療機器実現の鍵を握っている。
筆者プロフィール
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所、グロバルヘルスイニシャチブ(GHI)等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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