デジタル社会における人と機械の新たな関係、日本のスマート製造はどうあるべきか:製造業IoT(1/2 ページ)
「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」のセミナーに日立製作所 研究開発グループ 生産イノベーションセンタ 主管研究長の野中洋一氏が登壇。「スマート製造の国際動向、求められる人と機械の新たな関係」をテーマに講演を行った。
日立製作所が東京都内で開催したプライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO」(2019年10月17〜18日)のインダストリー分野のセミナーに、同社 研究開発グループ 生産イノベーションセンタ 主管研究長の野中洋一氏が登壇。「スマート製造の国際動向、求められる人と機械の新たな関係」をテーマに講演を行った。
各社がデジタル技術による「産業構造の中抜き」を強く意識
最近のIoT(モノのインターネット)に関するトレンドをみると、「Edge AI(エッジAI(人工知能))」「Connected Worker(コネクテッドワーカー)」「Mobile Factories(モバイルファクトリー)」などをキーワードとして、米国や中国などで活発に議論されている。また、半導体産業で運用が始まったOEE(Overall Equipment Effectiveness=総合設備効率)がスマート製造(スマートマニュファクチャリング)のパフォーマンス評価指数として、北米・欧州を中心に世界的に広まりを見せつつある。このように数多くの新技術が勃興し、一方で実用期に入った技術がより成熟してきている中、技術と人とのつながりはさらに重要になってきた。
新しい技術として注目を浴びているものには「Crowd Sourcing(クラウドソーシング)」「5G」「AR(拡張現実)」などがあり、いつでもどこでも同じ品質でモノを作れるようになってきた。人と機械の相互作用を大容量高速通信で情報共有し、よりスマートなモノづくりを目指す、という仕組みが世界的に構築されつつある。
特に、デジタル技術による「産業構造の中抜き」を各社強く意識しており、「PLCやDCSのソフトウェア定義化、モーター、工作機械、ロボットなどの主機のスマート化により、従来の産業構造を崩そうというメッセージを強く感じている」(野中氏)という。そして、新たな構造としては、システムアーキテクチャの議論が世界的に湧き上がっている中で、インダストリー4.0ではレファレンスアーキテクチャ「RAMI 4.0」が話題を集めている。同アーキテクチャは関係する全ての国際標準、データモデル、ユースケースを包含するが、これらに則さない商材はつながらず、エコシステムに参入できない、というものになっている。そして中国もドイツと同じアプローチを取ろうとしている。両国が経済関係を強めている中で、システムアーキテクチャの相似性もみえてきた。
そうした中で、日本にとって脅威となるのがインテリジェントファンクションの部分(=AI)となる。例えば、AIの産業応用を国際標準およびユースケースを国レベルで商売を行う場合、中国市場に入る際には、部分的にでも公開しないと入れないというメッセージが込められている。スマート製造でもナショナリズムが台頭する中で、世界のルールにおいてもここ2年間で色濃く反映されてきた。
そうした中で、日立では「つながるとはどういうことか、人や機械がつながるというのは本質的にどう理解すればいいのか」ということをここ1年間かけて研究してきたという。「デジタル社会における人と機械の新たな関係」については、未来永劫に持続可能な社会づくりをしていく上で、スマート製造に関しての課題を深堀りしている。日本の現状を見ると、人口減少率は先進国の中でも最も高いが、人件費については欧州主要国と比べるとそれほど高くはない。また、人材の質は上位であることから、野中氏は「世界的に見て人の質、人件費はまだ戦えるポジョンにある。しかし、人口減や少子高齢化はスマート製造にどう関連しているか、を議論しなければいけない」と今後のテーマを示した。
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