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「K 2019」で見た、EUROMAPで「つながる」射出成形機の進化いまさら聞けないEUROMAP入門(2)(2/3 ページ)

射出成形機などプラスチックやゴム用加工機などでスマート化に向けて注目されている通信規格が「EUROMAP 77」である。本連載では「EUROMAP」および「EUROMAP 77」「EUROMAP 83」とはどういう規格なのかについて紹介している。第2回では、これらの規格によって射出成形機がつながるメリットについて、国際プラスチック・ゴム産業展である「K Trade Fair 2019」の出展内容から紹介する。

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「つながる」世界を拡充するWITTMANN BATTENFELD

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WITTMANN BATTENFELDのブース(クリックで拡大)出典:筆者撮影

 WITTMANN BATTENFELDは、射出塔スクリューのトルク制御により樹脂の状態を安定させ、品質を安定化させる「HiQ-Melt」、射出速度や保圧などのばらつきを自動的に補正し品質を向上させる「HiQ-Flow」、スクリューの逆止弁の動きを制御して射出量を安定化させ品質を向上させる「HiQ-Metering」などを搭載した射出成形機を展示した。品質向上を目的とした取り組みが中心であり、ENGEL AUSTRIAのような周辺機器を含む自動化やアシスト機能の展示は見られなかった。

 ただ、新型材料のブレンダー「GRAVIMAX G76」やオーストリアのNexus製の液化シリコーンゴム(LSR)供給機とのOPC UA経由での接続についてはデモ展示を行っており、「つながる」取り組みには積極的な様子が見てとれた。EUROMAP82.1、EUROMAP77の対応を明記したWITTMANN 4.0 Routerに接続されている射出成形機、自社製MESシステム「TEMI+」なども紹介しており、他社同様にEUROMAPにも対応していることを明示していた。

システム性をアピールしたKraussMaffei Technologies

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ENGEL AUSTRIAのブース(クリックで拡大)出典:筆者撮影

 KraussMaffei Technologiesは、AIによってステータスの監視を行う「SocialProduction」、VPの切り替えや保圧を自動的に調整することで製品の重量および品質を向上させる「APC plus」などを搭載した射出成形機を展示した。

 また、オープン性を重視(射出成形機と複数のロボットからなるコネクター製造機でEUROMAP77など多くのインタフェースをサポート)したデータハブシステム「EasyTrace」を使って製造されたコネクターにQRコードを印刷し、総合的な「つながる」システムとしてのトレーサビリティーを発揮できる点をデモンストレーションし、「つながる」ことによるシステム性をアピールしていた。

 以上のように、欧州の射出成形機メーカー各社は前回のK2016にて示されたオープン化の可能性をさらに発展させ、生産性を高める自動化やアシスト機能の開発を進め、EUROMAPやOPC UAへの対応を加速させていることが分かる。

欧州との競争を目指す中国各社の現状

 それでは、躍進著しい中国メーカーはどうだろうか。中国の射出成形機メーカーとしてHAITIANとYIZUMIのブースを確認した。

 EUROMAP対応を含むOPC UAなどのインタフェースは、HAITIANは「Connectivity Plus」、YIZUMIは「CMS」という製品として提供しているようだ。しかし両社ともOPC UAやEUROMAPや自動化、アシスタント機能などに関しての記述やデモ展示などを見つけることは出来なかった。おそらく今後マーケットがどのようになるのか、まずは接続性を提供し、欧州の動向を注視しつつ様子をうかがっていると感じた。

日本の主要各社の現状

 日本企業も、EUROMAPやOPC UAへの対応を広げる動きは、欧州各社と同様に活発化している。加えて特筆すべき動きもあった。EUROMAP対応を含むOPC UAに関してデモ展示を行っていた日本の射出機メーカーのうち今回は、日本製鋼所、東芝機械、日精樹脂工業の3社の展示内容に特に注目した。

 日本製鋼所は、オーストリアの射出成形専門のMESシステム会社であるT.I.Gの「TIG Authentic」と自社射出成形機をEUROMAP77にて接続し、リアルタイムの値を表示。同様に東芝機械は、EUROMAP77にてダッシュボードに自社射出成形機のリアルタイムの値を表示するデモ展示を行った。

 中でも特に目を引いたのは日精樹脂工業だ。2台の射出成形機が、金型温調器はEUROMAP82.1、ホットランナーはEUROMAP82.2RC1.0、材料供給機はOPC UA、チラー、取り出しロボット、組み立てロボットはEtherCATとオープンな技術を用いて多くの周辺機器との接続を行った。さらにそのデータをMQTTフォーマットに変換してクラウドに送信し、ブースにて印刷されていたQRコードをスマートフォンやタブレットで読み取れば、ブラウザ上で誰でもリアルタイムの値を見ることができるデモを展示していた。これだけの周辺機器の数を見ても「つながる」への取り組みは他社より抜きん出ていると言える。

 それに加えて日精樹脂工業は、欧州各社の一歩先を行くようなサプライズな発表を行った。OPC UAを標準搭載した射出成形機を発表したのだ。その詳細については日精樹脂工業のプレスリリースを参照頂きたいが、その骨子は以下の通りである。

  1. 欧州共通MES通信規格EUROMAP77への対応(Basic)、周辺機器接続規格EUROMAP82.x・86・79への容易な対応を可能とする、OPC UAを標準搭載した新コントローラー「TACT5」
  2. EUROAMPの各通信規格対応やEtherCATの採用により、取り出しロボット、材料供給装置をはじめとするあらゆる周辺機器のネットワーク化が可能になる
  3. 接続された周辺機器の設定条件も成形条件として一元管理できるようになり、作業者負荷低減および効率化を図るとともに、省配線化によるカプラーや線材といった使用材料の低減(環境負荷低減)にも貢献可能。また、保守面においてもダウンタイムの削減につながるリモートメンテナンスが可能になる他、将来的にはAIによる成形条件の最適化や成形不良対策、歩留まり向上による生産性の向上、消耗部品の寿命予測、設備機器の故障診断などが可能な「スマート成形工場」を実現できる

 EUROMAPに対応したOPC UAの射出成形機への標準搭載を正式に発表したのは、筆者が知る限り日精樹脂工業が初めてだ。これは、射出成形機のIoT対応に追加費用をかけることが難しいエンドユーザーには朗報といえる。なぜなら、OPC UAを標準搭載することで、エンドユーザーはリアルタイムデータを安価にかつ簡単に見ることが可能になるためだ。

 極端な例ではあるが、射出成形機がWi-Fi機器に接続されている条件であれば、フリーのOPC UAクライアントを自分のタブレットやスマホ、PCなどにインストールすることにより、リアルタイムの値やメッセージを表示することも可能だ。これが射出成形機の標準機能として実現可能になることによるユーザーのメリットは非常に大きいといえる。今回、日精樹脂工業はこの発表により今後の射出成形機のEUROMAP(OPC UA)インタフェース搭載の標準化が進むことの可能性を示したように思えた。

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