中国が躍進する半導体国際学会「ISSCC 2020」、採択状況と注目論文を紹介:組み込み開発ニュース(2/3 ページ)
半導体回路に関する国際学会「ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)」は2019年11月19日、東京都内で記者会見を開催し、「ISSCC 2020」の概要と注目論文を紹介した。
ISSCC 2020で存在感を示すアジア――中国の躍進が目立つ
ISSCC 2020では、Invited Industry Trackの招待論文4件を除くと、投稿論文数が629件、採択論文数が202件。採択率は32.1%となる。前回開催のISSCC 2019と比較すると、投稿件数は3.3%の増加、採択件数は4.7%の増加となる。
分野別に採択論文の割合を見ると、新設した機械学習領域が3%を占めている。その他、2%以上の動きがある分野は、アナログ領域が前回から2%増加し8%に、パワーマネジメント領域が2%減少し10%に、デジタル回路領域が3%減少し6%に、ワイヤライン通信領域が2%減少し6%となっている。また、5G(第5世代移動通信)が世界的に盛り上がりを見せる中、ワイヤレス通信およびRF領域がどちらも採択件数を増やしている。
地域別に採択論文の割合を見ると、アジアが48%とほぼ過半数を占めた。北米は前回から9ポイントの減少しており、北米の大学から採択された論文が減少したことが主要因となっている。欧州は数年間続いていた減少傾向が底を打ち、前年比1%増加を果たしている。また、グローバルベースで見ても大学単独の論文は減少し、産学連名の論文が増加する傾向にある。
国別の採択論文件数は、米国が71件、韓国が35件、中国(香港、マカオを含む)が23件、台湾が22件、日本が12件となる。米国が減少傾向にある中、韓国はダウントレンドにあった前年から打って変わって10件の増加、中国も前回から5件増やした。
また、従来から採択件数が多かった香港やマカオを除いた中国本土からの採択件数も飛躍的に増加している。ISSCC 2017では中国本土からの採択件数が1件だったが、ISSCC 2020では15件の採択となった。ISSCC 2020 Far East Regional Chairを務める東京大学 生産技術研究所 教授の高宮真氏は「4年間で採択件数が15倍に増えている。ものすごい勢いで中国本土からの発表が増えているのは注目すべき点だ」と述べる。
アジア地域の論文が多数を占める分野は、「Imagers and ToF Sensors」で10件中9件、「High Performance Machine Learning」で4件中3件、「Low Power Machine Learning」および「Domain Specific Processors」でそれぞれ3件中3件、「Non Volatile Memories」で5件中5件など。イメージセンサーや機械学習、プロセッサ、メモリ領域に強みがあることが分かる。全34セッションの内、アジア地域の論文が75%以上を占めたセッションは7分野あった。
日本の採択論文全12件の内、企業の論文は10件と前回から微増したものの、大学の論文は2件と大きく減らした。発表機関別では、ソニーセミコンダクタソリューションズがワイヤレス通信領域で1件、イメージャー/MEMS/医療/ディスプレイ領域で共著を含め3件、全体で4件と日本勢で最も多く採択された。続いて東芝が3件、ルネサスエレクトロニクスと日立製作所が2件採択されている。
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