ガラス製マイクロ化学チップを安価に量産、パナソニックがレンズ生産技術を応用:FAニュース(2/3 ページ)
パナソニックとマイクロ科学技研は、環境センシングや血液検査、製薬用装置などに用いられているガラス製のマイクロ化学チップをガラスモールド工法で量産する技術を共同開発した。従来のフォトリソグラフィーとエッチングによる工法と比べて、大量生産が可能になるとともに、約10分の1の低コスト化、約10倍の高精度化も実現できるという。
マイクロ流体工学の世界市場は2020年に約6500億円へ
マイクロ化学チップの応用範囲は徐々に拡大しつつある。環境分析や免疫分析といった分析用途の他、近年では抗がん剤やゲル粒子の合成といったモノづくりにも適用されるようになっている。マイクロ流体工学の世界市場は、2015年の約20億米ドル(約2180億円)から年平均約20%で成長し、2020年には約60億米ドル(約6540億円)に達するという調査結果もある。
さまざまな可能性のあるマイクロ化学チップだが、普及に向けてはまだ課題が多い。特に大量生産については、薬品耐性や強度などの性能に課題のある樹脂製は射出成形で月産数万枚以上を実現できているが、より高性能のガラス製はフォトリソグラフィーとエッチングにより人手で1枚ずつ生産しているのが現状で月産数百枚にとどまっている。
先述したマイクロ流体工学の世界市場のうち、マイクロ化学チップが約30%を占めるが、ガラス製はさらにその30%程度にすぎない。もし、ガラス製マイクロ化学チップを大量生産し、低コスト化と短納期を実現できれば、マイクロ化学チップの市場を拡大するだけでなく、より幅広い用途にマイクロ流体工学を適用できるようになる可能性もある。また、高価であるがゆえに難しかったディスポーザブル使用も可能になる。
デジタルカメラ向けレンズの生産に用いられるガラスモールド工法を活用
このマイクロ化学チップの量産技術開発に名乗りを上げたのがパナソニックだ。パナソニックは1990年代から、デジタルカメラ向けの球面レンズや非球面レンズ、光ピックアップレンズなどの製造にガラスモールド工法を用いている。
ガラスモールド工法は、ガラスを高温高圧でプレスして型形状を精密転写する技術であり、パナソニックは各種レンズの他にも微細構造素子の製造に適用するなど展開を広げてきた。同社 要素技術センター 開発3部 開発1課 課長の鈴木哲也氏は「ガラスモールド工法の新たな展開として、2012年ごろに北森先生とマイクロ化学技研に提案したところから開発が始まった」と語る。
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