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EV・自動運転時代でブレーキはどうなる? 新たな「止まる」の在り方東京モーターショー2019(1/2 ページ)

「第46回東京モーターショー2019」(会期:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)に出展した自動車部品メーカーの展示から、機械式ブレーキ(摩擦によるブレーキ)の電動化を支える技術や次世代の摩擦を用いないブレーキなど、これからのクルマを支えるブレーキの姿を紹介する。

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 電気自動車(EV)の研究開発が活発に進んでいる。クルマの「走る」を担うモーターやインバーター、バッテリーなどパワートレイン関連技術の進歩は目を見張るものがあるが、「止まる」を一手に引き受けるブレーキにも大きな革新が訪れている。

 本稿では、「第46回東京モーターショー2019」(会期:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)に出展した自動車部品メーカーの展示から、機械式ブレーキ(摩擦によるブレーキ)の電動化を支える技術や次世代の摩擦を用いないブレーキなど、これからのクルマを支えるブレーキの姿を紹介する。

曙ブレーキ工業

 曙ブレーキ工業は、サービスブレーキ(常用ブレーキ)を電動化した「電動サービスブレーキキャリパー」と、従来の機械式ブレーキとは全く異なる制動機構を持つ「MR流体ブレーキ」などを参考出品した。

 電動サービスブレーキキャリパーは、ブレーキパッドをローターに押しつける機構を従来の油圧(ブレーキフルード)から電動(モーターとボールねじ)に置き換えたディスクブレーキの機構部品だ。従来の油圧式ディスクブレーキで必要であるブレーキフルードやブレーキライン、ブレーキ倍力装置などが不要となるため、車両メンテナンスの負荷低減や車両設計の自由度向上などに貢献する。

曙ブレーキ工業が展示した電動サービスブレーキキャリパー(クリックで拡大)

 MR流体ブレーキは、溶媒に鉄粉などの強磁性体粒子を分散させた「MR流体(Magneto Rheological Fluid)」へ磁場を印加することで制動力が生じるブレーキ。ブレーキ内部に固定円盤とハブベアリングに同期して回転する円盤が交互に配置され、MR流体はこれら円盤間に充填されている。

 MR流体は磁場が作用すると強磁性体粒子の鎖状クラスターを形成するため、回転円盤によって発生したせん断応力によりクラスターが生成、崩壊を繰り返すことで、制動力が生まれる。機械式ブレーキの弱点だったブレーキダストや音、振動が発生しない次世代のブレーキとして開発を進めており、トヨタ車体の超小型EV「コムス」に搭載され実証を行っている。


曙ブレーキ工業が展示したMR流体ブレーキ(クリックで拡大)

 MR流体ブレーキの実用化時期や適合する領域について、同社担当者は「コストや重量面などの解決すべき課題があるため、具体的な時期は言えない。超小型モビリティに適している技術だ」と述べた。電動サービスブレーキキャリパーの実用化時期についても「数年以上はかかる」としている。

ジェイテクト

 ジェイテクトは、電動ディスクブレーキに用いる「非循環ボールねじ」を展示した。モーターの回転を受けてブレーキピストンを押し出す役目を担う。

 ボールねじは一般的に、ボールが軌道から脱落しないよう循環させる機構が主流となるが、ボール循環部によって本体が大きくなるというデメリットがあった。ジェイテクトは、電動ディスクブレーキにおいてボールねじに求められる直線運動距離が短いことに着目。ボールとボールの間にばねを介在させることで、循環機構を廃止しても回転を続けられる小型化したボールねじを開発した。グリスの改良により油膜切れによる効率の低下を防ぎ、十分な耐久性を確保しつつメンテナンスフリーを実現したという。


ジェイテクトが展示した電動ブレーキ用非循環ボールねじ(クリックで拡大)

 同社担当者は「ブレーキは重要保安部品であるので、信頼性や品質保証面では他のボールねじよりも圧倒的に高いものが求められる」とし、「現在も開発中で、2025年の実用化を目指す」と語る。また、量産車での電動ブレーキ採用についても「同時期以降の採用となるのではないか」と話した。

 回生ブレーキと機械式ブレーキの協調に関して、同社担当者は「回生ブレーキだけでは停車を維持することができない。停車を維持するためには機械式ブレーキが必要だ。また、回生ブレーキの緻密な制御に機械式ブレーキを補助として用いるため、自動運転時代でも機械式ブレーキは重要な技術だと思う」と語った。

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