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仮想実験室からデジタルツインへ、富岳が実現する自動車業界のCAEの形とはVINAS Users Conference 2019(2/4 ページ)

ヴァイナスのユーザーイベント「VINAS Users Conference 2019」で、理化学研究所 計算科学研究センター・神戸大学大学院システム情報学研究科 計算科学専攻 チームリーダー・教授/博士(工学)の坪倉誠氏が登壇し、「HPCシミュレーションとデータ科学の融合による新たな自動車空力について」をテーマに講演を行った。

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多目的最適化と可視化

 さらに多目的最適化の関数評価部分には、形状修正(モーフィング)や大規模空力シミュレーションを組み込み、処理を自動化。実際の自動車空力開発を想定したシステムの実証を実施した。

 図4は、セダン型車両模型の形状最適化シミュレーションの概況を示す。

図4 形状最適化シミュレーションの概要(出典:理化学研究所 計算科学研究センター)
図4 形状最適化シミュレーションの概要(出典:理化学研究所 計算科学研究センター)

 このフレームワークでは「車両の形状を決める」「シミュレーションを流す」「空力性能を確認する」「最適化計算で次に検証する形状を決定する」というサイクルを示しているが、この実証ではこの過程を自動化した。

図5 空力形状最適化のフレームワークについて(出典:理化学研究所 計算科学研究センター)
図5 空力形状最適化のフレームワークについて(出典:理化学研究所 計算科学研究センター)

 研究室のワークステーションでは、まず第1世代の車体の形状を決定し、形状を自動生成する。次に形状のSTLデータを京へ送って限界までジョブを投入し、そこから導かれた結果(目的関数ファイル)を、さらにワークステーションにある進化計算アルゴリズム「Cheetah」に戻す。それに基づき、さらに新しい集団を作成して同じ処理を繰り返す。

図6 形状最適化の条件設定(出典:理化学研究所 計算科学研究センター)
図6 形状最適化の条件設定(出典:理化学研究所 計算科学研究センター)

 この形状最適化の設定では、車両が主流方向に対して真っすぐな状態(正対風)と、3度ほどヨー回転させた時(弱い横風が吹く状況を示す)の空気抵抗係数(CD値)および揚力係数(CL値)を見ることにとした。正対風の状態とヨー回転状態のCD値の差を見ることで、車両の横風に対するロバストネス(安定性)を評価する。よって形状最適化では、上記4つの値(目的関数)を全て最小化させる値を求める。

 設計変数は図6のように、車両の中央断面に対して8カ所設定する。風洞実験想定のスケールモデルを利用することとした。集団サイズは、12世代分、それぞれの世代で18固体、2通りの接近流風向き(0°と−3°)を掛け合わせた値となる。さらに、設計変数を減らすためにL36直行表を用いる。合計504ケースのLES計算となる。

 「2007年に、フォーミュラカーの約1億セルのシミュレーションを、地球シミュレーターを使って半年間で計算したと発表した。今回の計算はそれが1ケースの計算に相当し、CUBEの計算はそれを504個流すことになる」(坪倉氏)

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