ドアtoドアの空飛ぶクルマに挑む、日本人連続起業家を支える3つの力とは：イノベーションのレシピ（1/3 ページ）
新たなモビリティ「空飛ぶクルマ」の市場で注目を集めているスタートアップ・NFTの創業者兼CEOのカプリンスキー真紀氏が「SNUG Japan 2019」の基調講演に登壇。連続起業家として取り上げられることも多い同氏のこれまでの取り組みを紹介した他、起業家として信念や、NFTの空飛ぶクルマである「ASKA」の狙いなどについて説明した。
新たなモビリティとして期待されている「空飛ぶクルマ」。エアバスやボーイング、ベルヘリコプター、ウーバーなどさまざまな企業が参入を表明しており、開発が急ピッチで進んでいる。日本国内での動きはまだ鈍いものの、それでも経済産業省が後押しする方針を示しており、NECが試作機を披露するなどの試みも出てきた。
この空飛ぶクルマの市場で注目を集めているスタートアップの1つがNFTだ。一般的な自動車に折り畳み式の翼を搭載したかのような「ASKA」を開発中で、2020年中にもデモ機によるテスト飛行を行う予定だ。2025年の市場導入を目指しており、米国市場におけるレンタカーのリース料金と同等の月額450〜1000米ドルのサブスクリプションでサービスを提供したい考えだ。
日本シノプシスが主催するユーザーイベント「SNUG Japan 2019」（2018年9月13日）の基調講演に、NFTの創業者兼CEOのカプリンスキー真紀氏（以下、真紀氏）が登壇。連続起業家として取り上げられることも多い同氏のこれまでの取り組みを紹介した他、起業家として信念や、NFTの空飛ぶクルマであるASKAの狙いなどについて説明した。
3度の連続起業を支える「3つの力」とは
真紀氏はこれまでイスラエル、東京、現在のシリコンバレーと3度の起業を行っている。同氏は「これまでいつも、実績、信頼、資金、ネットワークの全てがゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロの中での起業だった。そんなゼロベースの中で不可能を可能にしてきた背景には3つの力がある」と語る。
1つ目は「Yes, And」。物事何でも「Yes, But」に捉えがちだが、そこを前向きに捉える力だ。「この『Yes, And』によって、七転び八起きして、連鎖する環境を作り出すことができた」（真紀氏）。2つ目は「光を見る力」。この先に将来があると見通して、自分の力を信じて前に進む力である。そして3つ目が、どんどん変えて行くことを恐れない「ピボット力」になる。
これら3つの力は幼少期の体験の影響が大きい。愛知県名古屋市の一般家庭に生まれた真紀氏だが、3歳の時に父親ががんで他界し、5歳のときには妹を交通事故で亡くしている。これらの体験から「悔いのないようにいつも全力で頑張りたい」（同氏）という思いを持つようになった。
そういった強い思いもあって、中高大学一貫校を中途で抜けて英国への留学を決断。さらに、心理学を学んでいたロンドン大学の大学院から、イスラエルの国立大学院に学びの場を移すという決断を生む。そして、自身の勉学の成果を社会に役立てるべく、日系商社に就職してイスラエルにおけるビジネス開発を手掛けることとした。しかし、その商社は1年でイスラエルを撤退。真紀氏自身は、イスラエルという国に可能性があると考えており、そこで後に夫になるガイ・カプリンスキー氏（以下、ガイ氏）とともに1社目の起業に挑むことになった。
1社目のWBOは、中東などで広く行われている、国が防衛関連の装備品を輸入する場合に企業に対して何らかの見返りを義務付ける「オフセット義務」を手掛ける企業だった。各国の経済産業省と交渉する必要があり、1回のプロジェクトで6カ月かかる上に、成功報酬は後払いという厳しさもあり、最初の2年間は厳しい状態だった。「お金がなく週末のレストランのアルバイトで生活費を工面していたほど」（真紀氏）。しかしその後、イスラエルの元国防長官がパートナーに加わり、フィンランド向けのオフセット義務で成功を収めてからは事業が軌道に乗り始める。起業から10年間で、欧州中心に15カ国でクライアントを獲得した。同氏は「WBOの成功の基になったのが、3つの力の1つ『Yes, And』と『光を見る力』だった」と語る。
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