ロボットに最適なOSは「Ubuntu」か、長期サポートとパッケージ管理が強み:ロボット開発ニュース
Canonical Japanは2019年9月20日、東京都内で記者向けに説明会を開催し、ロボティクスにおけるUbuntu採用の利点と実績を訴えた。
モノ売りからコト売りへの転換が時流に乗る中、ロボティクス産業も同様にソフトウェアフレンドリーであるべきと主張する企業がある。Linuxディストリビューション「Ubuntu」の開発を支援するCanonical(カノニカル)だ。同社日本法人のCanonical Japanは2019年9月20日、東京都内で記者向けに説明会を開催し、ロボティクスにおけるUbuntu採用の利点と実績を訴えた。
UbuntuはDebian GNU/Linuxの流れを引くOS(オペレーティングシステム)だ。Debianと同様にオープンソース思想を重視して開発されており、オープンソースコミュニティから生まれた最新のソフトウェア技術をいち早く取り入れることを特徴とする。Ubuntuの開発はカノニカルと開発者コミュニティが共同で行っており、カノニカルは収益をUbuntuの商用サポート提供によって得ている。
Canonical Japanでリージョナルセールスマネージャーを務める柴田憲吾氏は「最新のLinuxカーネルであるバージョン5.3が先日(2019年9月15日)リリースされたが、Ubuntuでは来月(2019年10月17日)リリース予定のUbuntu19.10で実装する。われわれはオープンソースソフトウェアの進化をフォーク(あるソフトウェアのソースコードを分岐し、別のソフトウェアを開発すること)させずに、ユーザーへ本流のものをいち早く届ける。この点が海外で評価されている」と述べる。
また、カノニカルは組み込み用途に適したLinuxディストリビューション「Ubuntu Core」の提供を行っている。同OSはUbuntu LTS(Long-Term Support:長期サポート版)がベース。最新版のUbuntu Core 18ではカノニカルによって10年間のセキュリティアップデートが提供され、「10年のサポートを行う組み込みLinuxはそう多くないと思う」(柴田氏)。また、搭載するパッケージを抑えたためOSイメージサイズが260MBと小さく、他のディストリビューションと比較して脆弱性やバグのリスクが低いことも長所だという。
また、柴田氏はロボットを含めたハードウェアの開発者に対して、デバイスを販売するクローズドなモノ売り型ビジネスから、アプリケーションや機能を提供するオープンなモノ売り型ビジネスに移行するよう訴える。そのために求められるOSとして、アプリケーション開発者に対してオープンであること、OSベンダーのロックインがないこと、OTA(Over the Air)に対応した強固なOSであることを挙げ、それら条件に対してUbuntuが最適なOSであると強調した。
組み込み開発に有益なUbuntuの特徴として、セキュアかつコンテナ化されたパッケージ管理システム「Snap」や、マネタイズやOTA実装を支援するストア機能「Snap Store」があるという。ロボット開発で活用が進むアプリケーションフレームワークの「ROS(Robot Operating System)」も、Ubuntuを推奨OSとして設定している。ロボットや組み込み機器への採用事例として、CYBERDYNEが開発するロボットやAmazonの「DeepLens」および「DeepRacer」、DJIのドローン搭載型コンピュータ「Manifold 2」を紹介した。
柴田氏は産業用ロボットへのUbuntuやROSの適用可能性についても言及し、「産業用ロボットと同じく、リアルタイム性が必要なMFP(複合機)などでも以前はRTOS(リアルタイムOS)が用いられていた。現在は高機能が実現しやすい汎用OSを中心としつつ、必要な処理の部分にリアルタイム性を持たせていることが多い。Ubuntuはリアルタイムカーネルをオープンソースで提供している」とする。同カーネルは、海外の通信事業者においてNFV(Network Functions Virtualisation)の領域で実績があるという。
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