組み込みLinuxの10年サポートを明言、サイバートラストが製造業向けIoT事業を加速:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
サイバートラストは、10年間の長期サポートに対応する組み込みLinux「EMLinux」を核とするIoT機器向けのサービス「EM+PLS(イーエムプラス)」を2019年秋にリリースする。EM+PLSを構成するトラストサービス向けのマイコン開発で東芝デバイス&ストレージとの提携も発表した。
サイバートラストは2019年7月9日、東京都内で会見を開き、製造業向けIoT(モノのインターネット)事業の戦略について説明した。10年間の長期サポートに対応する組み込みLinux「EMLinux」の試用版の無償提供を同日から開始するとともに、EMLinuxを核とするIoT機器向けのサービス「EM+PLS(イーエムプラス)」を同年秋にリリースする計画である。また、EM+PLSを構成するトラストサービス向けのマイコン開発で東芝デバイス&ストレージと提携することも発表した。
サイバートラスト 副社長 執行役員の伊東達雄氏は「工場の制御機器やロボット、通信基地局や鉄道、航空などの社会インフラなどに用いられる製品の利用期間は10年以上になるのが当たり前だ。これらの製品がインターネットにつながってIoT化していく中で、そこから出てくるデータの信頼性や、関わるサプライチェーン全体の信頼性を確保するためのセキュリティも課題になっている」と語る。そして、これらのIoT化やセキュリティ機能を含めて製品開発はより複雑になる一方で開発期間の短縮も求められているため、全てを自社開発することは困難になっている。
EM+PLSは、製造業が直面するこれらの課題を解決するために開発されたサービスだ。「長期利用できるLinux」「本物性を担保するトラストサービス」「コンプライアンスツールの拡充」という3つのコンセプトに基づいている。
「長期利用できるLinux」として提供するのがEMLinuxだ。EMLinuxは、Debianをベースにしながら、10年以上の長期利用を前提とする産業機器向けLinuxの開発を進めるCIP(Civil Infrastructure Platform)プロジェクトの成果に基づくパッケージになっている。サイバートラストとしては10年間のパッチ提供をコミットしており、「今後のCIPの成果や、顧客ごとの要望に応じてより長期のサポートも行えるようにしたい。サーバ分野では18年というサポート実績もあるので十分可能だろう」(伊東氏)という。また、EM+PLSの正式リリース時には、マルチOSソリューション「EMDuo」との組み合わせによるリアルタイムOSと共存する機能も提供していく考えだ。
「本物性を担保するトラストサービス」は、2017年10月に発表した「Secure IoT Platform(SIOTP)」によって実現する※)。IoTデバイスに組み込むプロセッサに、半導体の設計と製造の段階からセキュア領域を用意してユニークな固有鍵を書き込めるようにしておき、サイバートラストの電子認証インフラを用いて個体識別し、その運用、保守、廃棄、リユースまでの管理を行う。
※)関連記事:半導体レベルからクラウドまでIoTサービスを守るセキュアIoTプラットフォーム
「コンプライアンスツールの拡充」では、パートナー企業と連携することにより、コードの真正性の確認や監査を行えるツールを利用できるようにする。一例としては、2019年7月5日に発表した大日本印刷との提携で発表したVDOO Connected Trustの脆弱性対策ソリューションによる、クラウドベースのファームウェア分析や脆弱性の検出、IoTデバイスのモニタリングなどがある。伊東氏は「製造業のサプライチェーンを“トラストチェーン”に進化させられるように拡充を進める」と述べる。現在、サイバートラストの技術パートナーは16社だが、今後もネットワークを広げていく構えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.