LoRaWANを再定義するIIJ、PoCを安価に立ち上げられるゲートウェイを発売:製造業IoT(1/2 ページ)
IIJと台湾のKiwi TechnologyがIoT活用に向けたLoRaWANの事業展開で協業する。Kiwi製のLoRaWANゲートウェイに、IIJが開発したLoRaWANの運用に必要なネットワークサーバ機能を組み込んだ製品や、LoRaWAN対応センサーなどをIIJが国内向けに販売する。
インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)と台湾のKiwi Technology(以下、Kiwitec)は2019年9月19日、東京都内で会見を開き、IoT(モノのインターネット)活用に向けたLoRaWANの事業展開で協業すると発表した。Kiwitec製のLoRaWANゲートウェイに、IIJが開発したLoRaWANの運用に必要なネットワークサーバ機能を組み込んだ製品や、LoRaWAN対応センサーなどを、同年11月1日からIIJが国内向けに販売する。ネットワークサーバ機能を備えるLoRaWANゲートウェイの価格は30万円程度を想定しており、LoRaWANのPoC(概念実証)の安価な立ち上げに貢献できるという。
「クラウドのネットワークサーバ機能はPoCではオーバースペック」
LoRaWANは、IoT向けのLPWA(低消費電力広域)ネットワークの1つとして知られている。免許不要の920MHz帯を使う通信変調方式が「LoRa」であり、デバイスからゲートウェイまでの通信や制御の方式を定めたプロトコル仕様がLoRaWANとなる。2023年時点のLPWA接続方式の世界シェア予測では、LoRaがNB-IoTと並んで43%を占めるという調査結果もあり、有力候補として各社が通信サービスを提供するなど活動を広げている。
2016年からIoT事業を立ち上げたIIJは、2017年から静岡県で取り組みを始めた農業IoTの実証実験にLoRaを採用。そこで技術パートナーとなったのが、2015年からLoRaWANにフォーカスしてデバイスからアプリケーションまでを手掛けているKiwitecだ。
今回の協業の枠組みでは、IIJがKiwitec製のゲートウェイとセンサーデバイスを販売する。レンタル方式での提供にも今後対応する予定だ。また、ゲートウェイに組み込むLTE対応のSIMカードを含めて、センサーから収集したデータを蓄積するクラウドプラットフォームとしてIIJのIoTサービスを提案する。さらに、大量のゲートウェイ管理が必要な場合には、IIJ独自開発のSACM(Service Adaptor Control Manager)機能により、自動設定や遠隔監視も可能になる。
Kiwitecは既に菱洋エレクトロなど国内の販売パートナーがいるが、IIJが事業展開の中核に据えるのは、IIJが独自に開発したネットワークサーバ機能を組み込んだゲートウェイになる。LoRaWANによって、数百〜数千台のIoTセンサーをつなげて運用するにはネットワークサーバ機能が必要になるが、これまではクラウド上で構築するのが一般的だった。同社 IoTビジネス事業部 副事業部長 兼 プロダクト本部製品開発部長の齋藤透氏は「しかし、導入初期のPoCの段階では、クラウド上に構築したネットワークサーバ機能はオーバースペックであり、高コストになる原因にもなっていた。今回、Kiwitecと共同で開発したゲートウェイには、このネットワークサーバ機能をゲートウェイにビルトインしている。約1000台までのIoTセンサーの運用に対応しており、小売店舗への導入であればこのゲートウェイが1台あれば事足りる可能性が高い」と語る。
またこのゲートウェイには、先述したSACM接続用ライブラリも組み込まれており「電源を入れてインターネットに接続するだけで自動設定が完了し、システムの稼働を始められる」(齋藤氏)という。
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