大企業からスタートアップ、芸術家まで駆け込むDMM.make AKIBAのモノづくり哲学:DMM.make AKIBAを支えるプロフェッショナルたち(1)(2/4 ページ)
さまざまなモノづくりを支援するDMM.make AKIBAの運営に携わる人たちにスポットを当て、世の中にないものを生み出そうとする現場の最前線を追う。第1回は、機材の運用から試作相談、受託開発までサポートするテックスタッフたちを紹介する。
スタートアップにおけるモックの重要性
スタートアップからの相談で最も多いのがモック(モックアップ)の製作だ。展示会、投資家へのプレゼンテーションといったビジネスを大きく左右するものや、量産化の検討や内部設計検討のものまで用途は多岐にわたる。
DMM.make AKIBAでは、モックの製作時に利用目的や開発フェーズをヒアリングした上で受託することを心掛けている。通常の試作会社であれば、顧客のオーダー通りのモックを製作して納めるのが常だ。しかし、量産化を目指しているスタートアップの場合には、試作品のモックの段階でも、内部に部品を収めやすい構造になっているのか、金型で生産できる形状なのかなどをあらかじめ考慮する必要がある。
「量産を経験している方や大企業の方はモックの重要性を理解していますが、経験値の少ないスタートアップはモックの重要性を理解していないケースが多いのは事実です。きちんと考えてモックを作らないと資金調達もできないし、その後の量産でも苦労することになります」(山口氏)
DMM.make AKIBAの会員で、車載用運転支援デバイス「Pyrenee Drive」を開発するPyreneeは、モックの試作をたびたびDMM.make AKIBAに依頼している。
展示モデルの外装の造形では、光造形方式の3Dプリンタで造形しただけのモックの表面に下地処理を施し塗装を請け負った。たかが下地処理と塗装と思うかもしれないが、実際に塗装を外注に出そうとすると落とし穴が多々ある。
Pyreneeが開発する「Pyrenee Drive」は自動車に後付けし、事故リスク発見の遅れや、ドライバー自身の誤判断による事故を減らすことを目指したAIドライバーアシスタントだ(出典:Pyreneeのプレスリリースより)
「自分たちで造形していないものを持ち込まれて、塗装仕上げだけやってくれる業者もほとんどいません。しかも、3Dプリンタ用の素材は特殊なものが多いので、業者からも敬遠されます」。そう語るのはテックスタッフとしてPyreneeのモック製作をサポートした村田至氏だ。
本来、塗装を依頼する場合には、指示書を用意して、色や表面加工の仕様にも細かな指定が必要になる。しかし、DMM.make AKIBAのでは、Studio内のサンプルを見ながら細かく仕様を決めることで、通常の外注であれば1、2週間かかるところを翌日には仕上げるという。
「外でなら断られるようなものを短納期でできるのは、お互いに何をやっているのか、何が得意なのかを理解している関係だからこそです。Studioに出入りしている会員であれば、何をしているのか、何に困っているのかを普段の会話から把握できるし、信頼関係がある中でサポートできます。こうした協力ができるのは、DMM.make AKIBAのようなスペースならではだと思います」(村田氏)
DMM.make AKIBAのサポートも受けながら開発を続けていたPyreneeは、シャープやNVIDIAといった大手企業の支援を得ることに成功し、2020年度の発売に向けて量産化を進めている。
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