丈夫でしなやかな超撥水材料はハリセンボンに着想、市販の材料で作成できる:材料技術(2/3 ページ)
NIMSがハリセンボンの表皮から着想を得た新しい超撥水材料を開発したと発表。従来の超撥水材料は、摩耗や変形によって超撥水性を喪失することが課題だったが新材料はこれらを克服した。シリコーンや酸化亜鉛、酢酸エチルといった市販品を用いて製造できることから実用化に向けたコスト面の課題も小さいという。
「金太郎あめのように」超撥水性が発現
この“丈夫でしなやかな超撥水材料”の開発に向けて、内藤氏らの研究グループが注目したのがハリセンボンである。
魚であるハリセンボンの表皮には超撥水性はない。しかし「うろこから変形した硬いトゲと柔らかい皮膚という組み合わせに着目した」(同氏)。ハリセンボンのトゲは、四方に針が伸びた消波ブロック状になっている。外面に突き出すトゲの部分以外の3本の針によって、柔軟性に富んだ皮膚の表面からトゲを突き出せる。内藤氏は「この複合構造を工業材料にできれば“丈夫でしなやかな超撥水材料”を実現できると考えた」と説明する。
ハリセンボンの複合構造をまねる上で選定した材料が、皮膚に対応する汎用シリコーン樹脂と、トゲに対応する酸化亜鉛を結晶成長させた消波ブロック状のナノウィスカだ。これら市販されている2つの材料を混合して、溶媒となる酢酸エチルで練り合わせるだけで、今回開発した超撥水材料を作ることができる。なお、超撥水性を発現させるためには、酸化亜鉛ナノウィスカを一定以上の比率にする必要がある。
練り合わせた超撥水性材料はそのままシリコーン樹脂の同じような固形の樹脂として使用できる。また、溶媒の酢酸エチルで希釈することで一般的な塗料と同様に使うことができる。「鉄鋼、アルミニウム、ガラス、紙、ゴム、繊維である綿など、どんなところにも塗ることができる」(内藤氏)。また、固形樹脂の切断面にも「金太郎あめのように」(同氏)超撥水性が発現する。
そして最大の目的である“丈夫でしなやかな超撥水材料”という観点でも、ひねったりねじったりしても、表面をこすっても超撥水性が保持されることを確認している。表面こすりのテストでは1000回こすった後でも超撥水性が保持されたという。内藤氏は「ひねったりねじったりこすったりした後に、材料の内部から酸化亜鉛ナノウィスカが表面に出てくることを確認している。これによって表面の微細な凹凸形状が維持されるので、超撥水性を保持できる」と説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.