オムロンが工場5Gの実証実験、無線接続でフレキシブル生産ラインの実現へ:スマートファクトリー(2/2 ページ)
NTTドコモ、ノキアグループ(以下、ノキア)、オムロンは、工場など製造現場において5Gを活用した共同実証実験を実施することで合意した。オムロンの産業機器の主力工場である草津工場を中心に取り組みを進める。具体的な実証実験の内容は2019年内につめて、早期に実施したい考えだ。
製造業が5Gに熱視線、工場での活用の市場規模は400兆円のポテンシャル
3社はNTTドコモが主催する5Gオープンパートナープログラムの中で関係性を深めてきた。同社 執行役員 5Gイノベーション推進室長の中村武宏氏は「このプログラムには2800社以上が参加しているが、製造業の比率は17%で業種別で3位となっている。産業界から5Gの引き合いは大変強い」と述べる。
今回の実証実験ではさまざまな課題が想定されている。有線ネットワークで実現していた、モノづくりに求められる高信頼、高品質な通信を無線で実現することや、多くの金属類が存在する特殊無線伝搬環境への対応、工場内機器から生じるノイズ影響への対策などだ。
また、NTTドコモは2019年9月4日に、今回の3社の枠組みと同じく5Gを活用した製造現場の高度化に向けた共同検討を始めることでファナック、日立製作所と合意している。製造現場で5Gを活用するための知見がNTTドコモに集まることになるが「各社との秘密保持契約に抵触しない範囲で、できるだけ知見やノウハウを共有できるようにしたい」(中村氏)としている。
ノキアの基地局事業の国内展開を担うノキアソリューションズ&ネットワークス 執行役員 NTT事業本部長の木田等理氏は「コンシューマー向けのサービス中心の収益は横ばい状態だが、5G時代の産業向けIoT市場は大きく拡大する可能性がある。その市場ポテンシャルは、全体で320兆〜900兆円、今回の実証実験と関わる工場だけで見ても130兆〜400兆円ある」と見込む。
なお3社は、「IIFES2019」(2019年11月27〜29日、東京ビッグサイト)において、工場における5G導入の実証実験に関する展示を行う予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 工場への5G導入でファナックと日立が組む理由、完全無線通信化も視野に
ファナック、日立製作所、NTTドコモは、5Gを活用した製造現場の高度化に向けた共同検討を開始することで合意した。ファナックは本社工場、日立は大みか事業所で、5Gの電波伝搬測定と伝送実験を順次開始する。現在、工場やプラント内の通信ネットワークは基本的に有線でつながっているが、これらを完全無線通信化することも視野に入れている。 - 工場5Gは本当に使える? DMG森精機が伊賀事業所で今秋から実証開始
DMG森精機は、2019年秋から工場内でのローカル5Gの実証を始めることを明らかにした。5Gを工場内、もしくは工作機械で使用する価値を検証する。同社ユーザーイベント「伊賀イノベーションデー2019」(2019年7月9〜13日)では、5Gの紹介コーナーなども用意した。 - オムロンの“標高10mのIoT”は製造現場を明るく照らすか(前編)
オムロンは「IoT時代のFA」をテーマに記者会見を開催した。インダストリー4.0などIoTの製造現場での活用が進む中、同社の考えるFAの将来像と戦略、またそれを実践する製造現場などを紹介した。前編では同社の考えるIoT戦略について、後編では製造現場におけるIoTの自社実践の様子についてお伝えする。 - オムロン逆転の発想、「カイゼン」と「省エネ」は同じことだった
生産のQCD(品質、コスト、納期)を見直すカイゼン活動は、現場力の見せ所だ。一方、省エネはこれまで現場から離れた工場の管理部門の役割だとされてきた。QCDと省エネを同じ目線で捉えると何ができるのだろうか。オムロンの事例を小寺信良が紹介する。 - プライベートLTEからローカル5Gへ、ドイツの製造業は進化を止めず
脚光を浴びるIoTだが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第5回は、ドイツの製造業が期待を寄せる「プライベートLTE」と「ローカル5G」にスポットを当てる。 - 工場を変える2つの“コードレス”化
より簡単に、より自由で柔軟に、変化しています。