ドローンとUGVで「宅配クライシス」を克服、楽天が起こす新たな産業革命とは:物流のスマート化(1/2 ページ)
楽天の自社イベント「Rakuten Optimism 2019」のビジネスカンファレンスで、同社 常務執行役員の安藤公二氏が「あなたの生活がどう変わる:ドローンと地上配送ロボット」をテーマとした講演を行った。
国内4社目となる携帯電話事業への参入など業容の拡大を続けている楽天。主力事業であるEコマースとの関わりもあり、荷物の配送に役立つ物流関連についても多くの取り組みを進めている。その代表例がドローンや地上配送ロボットの活用だろう。自社イベント「Rakuten Optimism 2019」(2019年7月31日〜8月3日、パシフィコ横浜)のビジネスカンファレンスにおいて、同社 常務執行役員の安藤公二氏が「あなたの生活がどう変わる:ドローンと地上配送ロボット」をテーマとした講演を行った。
「ドローンが人の手を介さずに直接物を届ける配送は確実に実現する」
安藤氏は、「ドローンによって、人の手を介さずに、直接人々のもとに物を届けるという配送が、近い将来確実に実現する。それに伴い生活も大きく変わることになる」と述べ、ドローンや地上配送ロボットが配送にどのように関わってくるかを楽天の取り組みをまじえて紹介した。
こうした新しい配送ビジネスの活発化が期待される背景には、インターネットショッピングの普及がある。2010年には約7兆円だった国内Eコマース市場の規模は、2018年には約18兆円に拡大している。その一方で、物流・配送分野では、宅配荷物が2017年には42億個超に大幅に増加したが、そのうち2割が再配達という効率の悪さが目立ってきた。その分、ドライバー・配達者に大きな負担をかけている。さらに、配送車の増加により、CO2の排出も増えてきた。その上、ドライバーの高齢化や人手不足という状況も発生している。これらは合わせて「宅配クライシス」と呼ばれており、安藤氏は「この状況を改善する革新的なソリューションがこの業界にはいち早く求められている」と指摘した。
楽天は現在、ドローンと無人配送車を使い、空と陸からアプローチする「無人ソリューション」という方向で、課題に取り組んでいる。安藤氏は「無人ソリューションの導入により新たな産業革命が起こせる」と自信をみせた。
これらの取り組みの実証実験として、2016年5月に滋賀県のゴルフ場で、顧客に対しては国内初となるドローン配送サービス「そら楽」(現在は「楽天ドローン」)を開始した。同社とドローンのソリューションメーカーが共同で配送ドローンと専用アプリを開発。ゴルフ場のプレイヤーに対して、ゴルフボールや飲み物などをクラブハウスからプレイヤーが指定する場所までドローンで届けるというもの。この実験は1カ月間行い、新たな利便性を提供した。
他のドローン配送の実証実験例としては「ほしいものが空からすぐに届けられる」という手軽な配送サービスを体感してもうために「手ぶらでバーベキュー」などの実験も行っている。
さらに安藤氏は「ドローン配送は、新たな利便性の提供だけでなく、地域が抱えている配送困難エリア、物流困難者支援には有効な手段だ」とする。過疎化により商店が廃業し、地方の公共交通の衰退などで、買い物難民者が増えている。また、丘陵地、山間地、離島など地理的な条件で、そもそも配送困難エリアは国内に多数あり、高齢者の運転免許の返納が進むと、それまで自由に買い物ができていた人も不自由を感じるようになる。そうした喫緊の問題に応えるためにも、楽天は国内の地方自治体と連携した実証実験を推進してきた。
その代表例が、東日本大震災で被災した福島県南相馬市において、ローソンと連携して行った、移動販売車を組み合わせたドローン配送サービスの実験だ(2017年10月から6カ月間実施)。実験では、移動販売車両に積み込めない調理済みのホットスナックである「からあげクン」などの注文を受けた際に、楽天ドローンの専用機で店舗から移動販売先へ配送し、顧客に商品を提供するなどした。楽天は、「こうしたドローン物流を地域に根付かせることで、地方からイノベーションを起こせると考えている」(安藤氏)としている。
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