「はやぶさ2」第2回タッチダウンの全貌、60cmの着陸精度はなぜ実現できたのか:次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(14)(2/4 ページ)
小惑星探査機「はやぶさ2」が2019年7月11日、2回目のタッチダウンに成功した。60cmの着陸精度を実現するなど、ほぼ完璧な運用となった第2回タッチダウンの全貌について、はやぶさ2の取材を続けてきた大塚実氏が解説する。
リスクが大きいインパクタの運用、40分で小惑星の裏側まで回り込め!
インパクタの運用は、比較的リスクの大きな運用である。重量の制約のため通信系は搭載していないので、タイマーをセットして分離したら、もう中断できない。40分後には確実に爆発する。何があっても、それまでに、安全地帯である小惑星の陰まで逃げなければならない。モタモタしていたら、爆発の破片が飛んできてしまう。
40分で小惑星の裏側まで回り込むには、大急ぎで移動する必要がある。この退避行動中には、スラスターを20秒間も連続噴射することになるが、それまでの通常の運用では、噴射時間はせいぜい数秒だった。長時間噴射のリハーサルとして、事前に10秒間の噴射を試し、問題無いことを確認してから、本番に臨んだという。
そして迎えた運用当日。結果は、大成功といえるものだった。分離後の退避行動は正常に実施され、インパクタの作動後、探査機の状態が正常であることが確認された。退避途中で分離した小型カメラ「DCAM3」が、衝突直後の様子を撮影することにも成功。画像には、小惑星表面からのイジェクタ(噴出物)が、ハッキリと写っていた。
特筆すべきは、命中の精度である。重量の制約のため、インパクタには姿勢制御機能もない。分離時に余計な速度や回転を与えてしまえば、40分の間に誤差がどんどん累積し、狙いがズレてしまう。事前の予想では、3σ(約99.7%)で半径200m(緯度経度で約±30度の範囲)と、精度は決して高いとは見られていなかった。
ところが実際には、クレーターが見つかった場所は、狙った「S01」領域のすぐそば。目標点からは、わずか20〜30m程度しか離れていなかった。それだけ、分離が正確に行われたということだろう。S01領域は比較的平たんで、2回目のタッチダウンの候補地点として検討されていた場所。これで、地下物質の採取にぐっと近づいた。
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