キヤノンとユニバーサルロボット、人と共に働くロボットの“手”と“目”が協業:協働ロボット(2/3 ページ)
キヤノンとデンマークのユニバーサルロボットは2019年8月27日、生産現場の自動化支援で協業することを発表した。ユニバーサルロボットが展開する協働ロボットと組み合わせてプラグ&プレイで使用できるプログラム「Universal Robot +(以下、UR+)」にキヤノンが日本企業で初めて参加し、製品を展開する。
エンドユーザーの導入障壁を下げる「UR+」
「UR+」製品には既にグローバルで100社が参加し、190製品が登場しているという。その中で、今回、この「UR+」製品に、日本企業として初めて認定されたのが、キヤノンが開発した「Vision Edition-U」である。
「Vision Edition-U」は、FA領域でキヤノンが展開するネットワークカメラによる画像処理システム「Vision Edition」をユニバーサルロボットの協働ロボットに最適化したものである。ネットワークカメラの光学ズームやオートフォーカス、パン・チルトなどの機能を用いた柔軟な画像処理の設定を活用できる他、フローチャート式の直感的なUIを採用。特殊なプログラミングなしに容易にロボットがワークをカメラで認識し作業する設定を行える。
特にポイントになるのが、ネットワークカメラのパン・チルト・ズーム機能を活用して1つのカメラに複数の役割を担わせることができるという点だ。通常のFA用カメラは固定式で1つの認識ポイントに1台のカメラが必要になるが、ネットワークカメラであれば認識位置を移動させられるため、複数点の認識が可能だ。例えば、複数の箇所に置かれた製品在庫を自動でまとめてカウントしたり、製造ラインのワークの位置認識と品質検査を1台で行ったりするようなことが可能となる。
一方で、焦点を合わせる時間が発生するため、FA専用カメラのような高速認識などはできない。高速でモノが流れるラインや従来型の産業用ロボットとの組み合わせでは不向きである。そこで「人の動きの置き換えとなる協働ロボットとの組み合わせがベストだと考えた」とキヤノン イメージング事業本部 副事業本部長の枝窪弘雄氏は述べている。
キヤノンはイメージング技術の産業領域での応用を推進しており、FA領域は新規事業の中でも注力領域の1つとなっている。同社はFA領域では既に、さまざなな企業と提携を進めている。「Vision Edition」を使ったロボットとの協調についても、デンソーウェーブとの協業を発表しているが、ユニバーサルロボットとの協業はキヤノンにとっても大きな位置付けを占めるという(※)。
(※)関連記事:キヤノンが工場自動化領域に本格参入、シーメンスと提携
枝窪氏は「基本的にはオープンに協業先を広げるという方向性は変わらないが、今回のユニバーサルロボットとの協業はキヤノン側から持ちかけたもので重要視する枠組みの1つである。ユニバーサルロボットはグローバルでの協働ロボットの先駆者であり、キヤノンのグローバル展開においても連携する意味は大きい」と位置付けについて語っている。
キヤノンとユニバーサルロボットの協業が製造業にもたらすもの
それでは、具体的にキヤノンとユニバーサルロボットの協業は製造業に何をもたらすのだろうか。
1つの利点として、ロボットとビジョンのシステム設定が非常に簡単だという点が挙げられる。ロボットを活用するにはどういう動作をさせるかを定義する必要がある。そのためには、ロボットが動作を起こすトリガーと、動作の基準とする位置の把握が必要になり、そこでビジョンとの組み合わせへの関心が高まっているわけだが、従来システムでは設定の負担が大きいという課題があった。
「UR+」の枠組みを生かしたキヤノンのネットワークカメラとユニバーサルの協働ロボットの組み合わせでは、以下のわずか4つのステップで接続が可能となる。
- LANケーブルでネットワークカメラとロボットを接続
- 画像処理のフローを作成
- ロボット側で画像処理コントローラーのIPアドレスを設定
- ロボットのフローチャートに画像処理パーツを挿入
「最短で10分くらいで設定可能」(キヤノン)としており、非常に簡単に設定し現場ですぐに使えるようになるという点が利点である。
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