真にデジタル化しなければ、モビリティは生き残れない!:和田憲一郎の電動化新時代!(34)(2/4 ページ)
最近、筆者が若干勘違いしていたことがあった。デジタル化とビッグデータ化である。どちらかといえば、アナログに対するデジタルのように、ビッグデータは単にデータを集積したものという理解だった。しかし、最近、幾つかの訪問や体験を通して、デジタル化やビッグデータ化がこれまでとは全く違った局面を迎えているのではないかと考えた。その結果、移動手段であるモビリティは将来デジタル化しないと生き残れないと思ったのである。なぜこのような考えに至ったのか、今回述べてみたい。
貴州ビッグデータバレーとは
貴州省を訪問した主な理由は、データセンターの見学もそうだが、貴州省の省都である貴陽市で「中国国際ビッグデータ産業博覧会」が開催されたからだ。貴州省は重慶市や四川省の南に位置する省だが、中国国内でもあまり知られていない。人口約4000万人で、その3分の1が少数民族といわれている。貴州省は中国で長い間、最も貧しい地域とされていた。山に囲まれた地域のため産業がなく貧困に苦しんでいたのだ。
しかし、先述した地理的特徴を生かして、2014年に中国初のビッグデータ総合試験区として国家経済新区に指定された。指定を受けた貴安新区の面積は1795km2で、日本の最小県である香川県の面積1862km2とほぼ同等だ。貴安新区はITや新エネ車、航空宇宙、医療などの企業や研究機関を集め、数多くのデータセンターも建設されて、中国最大のビッグデータバレーを目指しているようだ。ここに、2030年には人口260万人の誘致を計画している。
毎年開催される国際ビッグデータ産業博覧会は、国内外から多くの企業関係者が訪れる。今回も、テンセントやアリババ、ファーウェイといった主要IT企業のみならず、通信や交通など多彩な企業が出展していた。なお、日本からの参加企業はNTTデータのみだった。また、子ども連れも多かった。聞いてみると、博覧会の開催中は近隣の学校や企業は全て休みとなり、協力体制をとっているようだ。
余談だが、ファーウェイの創業者でCEOを務める任正非氏は、貴州省安順市鎮寧プイ族ミャオ族自治県の生まれである。極貧の地域から出発し、ファーウェイを創業して今の規模にしてきた。5Gで先頭を走る最先端企業の創業者が、中国で最も貧しいと言われた地域から出ていることに驚かされる。
さて、日本のデジタル化、ビッグデータ化はどうだろうか。先般、スイスのビジネススクールIMDの調査による「2019年の世界競争力ランキング」では、ビッグデータの活用に関して日本は調査対象国の中で最下位と報道された。文部科学省は2022年度から新指導要領で、高校でのプログラミング教育の必修化を打ち出しているが、教える教師が不足するなど出遅れ感は否めない。
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