「Solid Edge 2020」は単なる3D CADではなく、製品開発におけるポートフォリオ:CADニュース
Siemens Digital Industries Softwareは、年次ユーザーカンファレンス「Realize LIVE Japan 2019」を開催。同イベントに伴って記者会見を開き、ミッドマーケット向け3次元ソリューションの最新バージョン「Solid Edge 2020」の機能強化ポイントについて説明した。
Siemens Digital Industries Software(以下、シーメンス)は、東京都内で年次ユーザーカンファレンス「Realize LIVE Japan 2019」(2019年7月10〜11日)を開催。同イベントに伴って記者会見を開き、ミッドマーケット(中小企業)向け3次元ソリューションの最新バージョン「Solid Edge 2020」の機能強化ポイントについて説明を行った。
冒頭、シーメンス Solid Edge製品担当ディレクターのジェフ・ウォーカー氏は「Solid Edgeは単なる3D CADではなく、製品開発ニーズに適した“ポートフォリオ”であり、30以上のアプリケーションを包含し、顧客のビジネス変革を支えている。Solid Edge 2020では各種機能拡充が図られており、モノづくりプロセス全体におけるデジタライゼーションを実現する」と紹介。そして、Solid Edge 2020の強化ポイントとして、(1)メカ設計、(2)エレ/メカ協調設計、(3)シミュレーション、(4)マニュファクチャリング、(5)クラウドベースコラボレーションを挙げ、それぞれ順を追って説明した。
「Solid Edge 2020」5つの強化ポイント
メカ設計の領域では、3Dデータを活用したAR(拡張現実)対応、寸法や注記、製造情報などを3Dデータに付加するモデルベース定義(MBD)に関する機能が強化された。さらに、リバースエンジニアリング、アディティブマニュファクチャリング(積層造形)向け設計機能、CADのコア機能の拡充なども図られているという。
また、エレ/メカ協調設計に関しては、新たに基板設計ツール「Solid Edge PCB Design」、3D-PCBコラボレーションツール「Solid Edge PCB Collaboration」がSolid Edgeのポートフォリオに加わった。これらにより、Solid Edge(メカCAD)とシームレスに連携し、双方向でやりとりをしながらPCB設計が行えるようになった。
シミュレーションについては、「使い勝手の向上などを含め投資を継続している」(ウォーカー氏)と強調し、Solid Edge 2020ではこれまで単一の選択肢しかなかったパッケージングを変更して、各種解析ソリューションを必要なレベルに応じて柔軟に選択できるようにしたという。
積層造形や切削加工などに最適化されたマニュファクチャリング機能も強化する。今回新たに「Solid Edge 2D Nesting」が加わり、最適化された2次元のカッティングパターンの作成が可能になった。
そして、クラウドベースコラボレーションについては、CADデータの保存、共有、閲覧、マークアップなどが可能な「Solid Edgeポータル」を紹介。Solid Edge以外の商用3D CADフォーマットに対応し、タブレット端末で利用可能なAR機能も搭載する。製品開発における関係者同士のコミュニケーション促進や意思決定の迅速化に役立つとする。Solid Edgeポータルは、Solid Edgeユーザーでなくても利用可能で5GBのストレージ領域を無償で使用できる。
Solid Edgeの提供方法については、月間または年間のサブスクリプション方式の他、永久ライセンス方式での販売も行う。「全てサブスクリプションということはせず、ユーザーニーズに合わせたライセンス形態を複数用意している。また、学生やスタートアップ企業(※)については、最上位パッケージの『Solid Edge Premium』を無償で提供する」(ウォーカー氏)。
※資本金が100万米ドル以内で、年間売上高が1000万ドル以内の設立3年以内のスタートアップ企業に対して、「Solid Edge Premium」を1年間無償提供する。
このスタートアップ企業向け優遇制度「Solid Edge for Startups program」は約2年前から展開しており、現在43カ国から1000社以上が利用。日本でもキャディ、ISC Japan R&D Center、セルファイバ、Smile Robotics、吉田電機設計が利用企業として名を連ねている。
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