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人が見る地図から機械が見る地図へ、ダイナミックマップが持つ可能性とは人とくるまのテクノロジー展2019(2/2 ページ)

「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)の主催者企画講演に、三菱総合研究所 次世代インフラ事業本部主席研究員の中條覚氏が登壇。「ダイナミックマップへの今後の期待」をテーマに、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」における検討などを踏まえて実用フェーズに入ったダイナミックマップについて、国内外の最新動向とともに、自動運転をはじめとする多用途展開など地域での活用可能性などを紹介した。

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ダイナミックマップでSIPは何をしているか

 2014年から開始されたSIP第1期で「自動走行システム」として取り組んだ自動運転分野の研究開発の中では、情報セキュリティ、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)、歩行者事故低減、次世代都市交通と並んで、ダイナミックマップも重点的に検討された。

 ダイナミックマップでは、動的、準動的、準静的、静的情報とともに、協調領域として多くの自動車メーカーが利用する地物情報に、海外の大手地図メーカーも携わった。また、2016年には企画会社としてダイナミックマップ基盤を立ち上げ、2019年3月末には全国の高速道路、自動車専用道路の整備を完了し、有償提供を開始した。

 SIP第1期の実証実験は、静的情報である高精度3D地図データの仕様や精度の検証、データの更新および配信システムの検証、インフラなどにより提供される動的データのひも付け検証などを目的に、計758.7kmの地図データを使用して実施した。実験は東京都内の新橋〜豊洲や台場エリアの一般道や、東名高速道路、新東名高速道路、常磐自動車道、首都高速道路などで行われた。

 2018年からスタートしたSIP第2期では、道路環境情報のロードマップとして、自動運転だけでなくSociety5.0などそれ以外の用途の実現に向けて取り組んでいる。実験スケジュールは2クールで行い、まずは2020年に実験を実施し、その結果を踏まえて2022年までにもう一度行う。実験エリアは高速道路、羽田空港、臨海副都心などが予定されている。一般道路での信号情報など4つの情報を使うことになっている。

 中條氏はこれまでのダイナミックマップの取り組みを3つにまとめた。1つは地図は人が見るものから機械が使うものへ大きく変わっており、それに合わせて作り方や使い方の両面でパラダイムシフトが起こるということだ。2つ目は、狭義のダイナミックマップはSIPを中心に研究開発が進展しており、2018年度までのSIP第1期で静的レイヤーを、第2期では動的レイヤーがテーマにあがっているという点だ。3つ目は狭義のダイナミックマップが2019年3月に商用化され、高速道路や自動車専用道路から利用が始まっているということだ。「おそらく一般道は当面、従来のデジタル地図が中心となる」(中條氏)。

モビリティによる地方創生にダイナミックマップも貢献

 ダイナミックマップの主な用途であるモビリティは、環境変化が著しい。地方では公共交通機関である乗り合いバスの利用者の減少が進み、廃止されるケースが増えている。また、自動車の運転業務の人手不足が深刻化してきた。一方で、モビリティのユーザーである訪日外国人旅行客は増加している。こうした現状を踏まえ、CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)をキーワードにモビリティを取り巻く環境が変化している。

 モビリティそのもののサイズも、自動車よりもコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動手段となる1〜2人乗り程度の電動車両「超小型モビリティ」や、時速20km未満で公道を走る4人乗り以上の公共の電動モビリティ「グリーンスローモビリティ」なども登場している。また、移動に関わる予約や決済を一括でカバーするMaaS(Mobility as a Service)も注目を浴びている。

 モビリティの現状と今後の方向性について、中條氏は「地方の公共交通は厳しい状況だが、一方でインバウンドはかなりの勢いで伸びている。また、新たなモビリティの登場で、クルマを示す概念が従来よりも広くなりつつあり、モード間、モビリティ+αで『つながる』世界への展開が進んでいる。新たなモビリティの活躍に向けて行政の支援が進み、ルール、法規則、標準化などが行われている」とまとめた。

 こうした中で、地域創生に向けてモビリティ向けのダイナミックマップは交通課題の軽減や解決、移動やモビリティによる地域需要の喚起などを目的に活用の可能性が広がることが期待されると締めくくった。

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