運転の権限は「切り替えない」、EPSソフトウェアで手動運転と自動運転が共存:自動運転技術(2/2 ページ)
ジェイテクトは、ドライバーによるステアリング操作と自動運転システムの操舵(そうだ)制御を共存させる技術「ハプティックシェアードコントロール」の開発を進めている。手動運転中に自動運転の操舵制御をオフにしたり、自動運転中にドライバーが操舵に介入できない状態になったりすることなく、ステアリングのアシストと自動操舵の両方を継続することができる。
「こっちの道に戻りたいんだ!」という意思表示
報道向けに開催した製品・技術体験会(2019年7月2日、ジェイテクト伊賀試験場)において、ハプティックシェアードコントロールを搭載した車両を公開した。ベース車両はトヨタ自動車「カムリ」で、事前に設定したGPS情報に基づくルートで操舵する自動運転システムが搭載されている。ハプティックシェアードコントロールはベース車両のソフトウェアを変更するだけで実現しており、ECUの追加やEPSの改造は行っていないという。
ハプティックシェアードコントロールが機能していない、EPSが角度制御のみの状態で乗車すると、ステアリングを手動で操作しようとしても、全く動かせなかった。ハプティックシェアードコントロールがオンになると、ステアリング操作が可能になり、車線変更や路上の障害物を避けるような動作を手動で行うことができた。
ただ、通常の運転感覚とは異なっていた。手動でのステアリング操作はGPSで決められたルートから外れる行動だ。これに対し、手動での車線変更や回避動作に支障を来す程ではないが、決められたルートに戻ろうとする自動操舵側の意思表示のような、反発する手応えがあった。
この“手応え”の強弱は、場面に合わせて自動車メーカーが自由に調整することが可能だ。ドライバーが自分の責任で運転する場合などは自動操舵の意思表示を弱められる。車線逸脱防止や車線維持支援といったアシスト機能では手応えを手動運転よりも強めたり、ドライバーが運転できない場合の緊急回避での操舵では誤ってステアリングに触れて挙動が乱れることを避けるために手動運転に対する反発をさらに強めたりすることができる。
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