2020年、意匠法はどう変わる? 物品だけでなく画像や空間、そして光も対象に:大改正5つのポイントを解説(1/4 ページ)
「特許法等の一部を改正する法律案」が2019年5月10日に可決・成立し、同年5月17日に法律第3号として公布された。これを受け、来年(2020年)にも新たな法制度がスタートする。今回の改正で製品デザインの保護に関わる「意匠法」はどのように変わるのか? 日本弁理士会意匠委員会 委員長の布施哲也氏が解説した。
意匠法大改正5つの要点
「特許法等の一部を改正する法律案」が2019年5月10日に可決・成立し、同年5月17日に法律第3号として公布された。これを受け、来年(2020年)にも新たな法制度がスタートすることとなる。
今回の法改正の中には、特許法の他、意匠法、商標法の改正なども含まれており、中でも意匠法の改正は“大変革”と呼べるほどの変更が行われるという。ご存じの通り、意匠制度は、特許や商標、著作権と並び、知的財産の大きな柱の1つとして機能し、さまざまな製品デザインの保護に活用されているため、多くの製造業が何らかの形でこの法改正の影響を受けることになる。
改正のポイントはどこか? 具体的にどのような効果(影響)があるのか? 日本弁理士会が開催した記者説明会「意匠法大改正5つの要点」の内容を基に詳しく解説する。
大変革となる今回の意匠法改正、その背景にあるものとは?
まず、今回の法改正の背景について、日本弁理士会意匠委員会 委員長の布施哲也氏は「現代のビジネス環境を見てみると、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータなどの波により産業構造が劇的に変化し、単なる品質や技術力だけでは勝ち残れない状況になってきている。また、モノを売るだけでなく、顧客体験の質も現代ビジネスにとって重要なテーマになっている。そうした変化の中において“デザインの力”というのは、イノベーション促進やブランド形成の源泉として企業の競争力に直結するものだと考えられる。このような考えの下、デザインを経営資源として位置付け、有効活用できる環境(保護制度)をあらためて整備すべきだということで、経済産業省・特許庁が取り組みを開始したのがきっかけだ」と語る。
大きく変わる意匠法、5つのポイント
では、具体的に意匠法のどの部分が大きく変わったのか? そのポイントとして布施氏は、
- 画像の保護対象の拡張
- 空間デザインの保護(建築物、内装)
- 関連意匠制度の拡充
- 存続期間の延長
- 一物品の考え方とその他の改正
の5つを挙げる。
画像の保護対象の拡張
画像に関しては、これまでも物品の「操作画像」「表示画像」の意匠登録は可能だった。操作画像は、画面上のアイコンなどを押したり触れたりして物品を操作できるもの。表示画像は、時計の文字盤のように物品の機能を果たすために必要な画像などを意味する。つまり、“物品を保護する”というこれまでの意匠制度の前提に基づき、物品に固定されている画像(機器などにあらかじめ組み込まれている画像)に限っては、その保護対象として認められてきた。
「ただ、今の世の中を見渡してみると、情報技術やインターネット技術の目まぐるしい発展があり、さらにスマートフォンに代表されるように、ユーザー自身が任意で機能や画像などの要素を取り込んで機器をカスタマイズするといった利用が当たり前になっている。このようなWeb上に存在し、ユーザーが使用する際にのみ機器に表示される画像は、顧客の体験価値の向上に寄与するものであり、企業側も画像創作に注力している。こうした要素は今後の産業競争力の向上に必要なものだと考えられる」(布施氏)。
そこで、今回の改正では画像保護の対象が拡張され、操作画像および表示画像の意匠登録については、これまで物品にあらかじめ組み込まれている必要があったが、今後は、機器にあらかじめ備わっていない画像、インターネットを介して一時的に映し出される画像についても登録可能(保護の対象)になる。「これまでの『意匠』の定義は、物品であり、視覚を通じて美感に訴え掛けるものでなければならなかったが、今回の法改正で物品に備わっていない画像、そして建築物(※後述)も保護対象として登録できるようになった。これは本当に“革命的な改正”といえる」と布施氏は述べる。また、画像保護の拡張に関連し、物品以外に投影される画像についても意匠登録が可能になるとのことだ。
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