DNPと富士フイルムが取り組む産業のデジタル変革、その裏を支える参照モデルの意味:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
日本マイクロソフトは2019年6月25日、業種や用途に特化したデジタル変革を支援する「Microsoft Partner Network(MPN) for Industryパートナー プログラム」の開始を発表。合わせて、同パートナープログラムを利用し、業種に特化したデジタル変革のレファレンスアーキテクチャ(参照モデル)構築に取り組むDNPと富士フイルムがそれぞれの事例を発表した。
流通業界のデジタル変革に取り組むDNP
DNPは流通分野のデジタル変革に取り組んでいるが、特にフロントエンドとなる集客のペーパーレス化、販促のスタッフレス化、決済のキャッシュレス化の3つに重点的に取り組んでいるという。DNP 執行役員 情報イノベーション事業部長の沼野芳樹氏は「具体的にはチラシのデジタル化、店頭業務の自動化、キャッシュレス決済などに取り組んでいる」と語る。
ただ、これらの変革を実際に実現しようとすると数多くの課題が立ちはだかる状況だ。DNPではこれら流通フロントエンドの変革を「マチナカ」「ミセナカ」「イエナカ」の3つに分け、さらに成果として「売上高拡大」「コスト削減」の2つを置き、12の課題と解決策に落とし込んだ。
この解決策に沿って具体的にデジタル化を進めようとしてきたが「実際にはこれらの変革にそれぞれの企業が個々に取り組む場合、各システムが個別化しデータ連携なども思うように進めることができない状況が生まれた。さらに多くの人材や開発時間がそれぞれのシステム開発で個々に積みあがる形となり投資コストが必要以上に必要になる。全体最適とは程遠い状況が生まれる」と沼野氏は課題感について語る。
そこで、これらを結び全体最適を実現するための仕組みとして、クラウド基盤である「Microsoft Azure(以下Azure)」を活用したレファレンスアーキテクチャを採用することにしたという。
沼野氏は「Azure上に構築したレファレンスアーキテクチャの活用により複数システムでのデータ連携を容易にできる他、レゴブロックの組み合わせのように短期間、低コストでユーザーの求める新たなサービスなどが開発できるようになると考えた。個別化が進んでいた流通小売業の課題を横ぐしで解決できる」と期待について述べている。
具体的には、業務課題の解決に向けたシナリオの作成や、ソリューションの調達や実装、API連携などを実現する。さらにこれらで得られたデータの結合や分析によるさまざまな価値を提供していく。
沼野氏はAzureを採用した理由について「マイクロソフトが連携しているパートナー企業やスタートアップ企業が豊富である点、セキュリティ面での堅牢性、豊富な開発陣などに魅力を感じた。これらと流通の多彩な仕組みを組み合わせることで従来にない価値を創出できると考えた。さらにパートナープログラムも開始されタイミングが良かった」と語っている。ただ、排他的契約としているわけではなく「基本的には他のクラウドベンダーでもクライアントのニーズ次第で対応はする」(沼野氏)と述べている。
共通のレファレンスアーキテクチャを採用することでサービスの差別化が行えないようなことも考えられるが「現実的には同じようなサービスを導入しても活用の度合いやノウハウなど流通事業者独自の取り組みによる部分が大きい。競争力は流通事業者との関係性で生まれてくると考えている」と沼野氏は語る。
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