深刻化する中小製造業の人手不足――労働力人口の減少と大企業志向の高まり:2019年版中小企業白書を読み解く(1)(5/6 ページ)
中小企業の現状を示す「2019年版中小企業白書」が公開された。本連載では、中小製造業に求められる労働生産性向上をテーマとし、中小製造業の人手不足や世代交代などの現状、デジタル化やグローバル化などの外的状況などを踏まえて、同白書の内容を4回に分けて紹介する。第1回は、中小企業の人手不足の現状を明らかにするとともに、人手不足の状況下での雇用の在り方について解説する。
中小企業における人手不足感の高まり
ここまでの調査結果から中小企業の人手確保が難しそうな状況が見えてくるが、実際の中小企業の人手不足感はどのようなものだろうか。
景況調査を用いて中小企業の人手不足感を業種別に確認すると、2013年第4四半期以降、全ての業種で人手が足りていないと答えた企業の割合が優勢となり、その後も年々人手不足感が強まり続けている状況が分かる(図14)。特に建設業やサービス業といった労働集約的な業種で人手不足感が顕著に表れていることが見て取れ、製造業も2017年の第3四半期以降からは、より人手不足感が強まっている。
次にUV分析と呼ばれる手法を用い、完全失業率を「均衡失業率」と「需要不足失業率」の2つに分解すると、現状では需要不足失業率がマイナスとなっている。採用や求職手続きの際に時間がかかることやミスマッチにより生じる「均衡失業率」とは異なり、「需要不足失業率」は労働需要が減少することにより生じるものであることから、この点からも企業が人手不足の状況にあることが分かる(図15)。
さらに、職業別、企業規模別の雇用ミスマッチについても確認したい。職業別求人倍率を2016、2017、2018年の3か年で比較すると、管理的職業以外のどの職業についても求人倍率は増加しており、全体的に人手不足感が強まっていることが分かる(図16)。ただし、職業ごとに人手不足の程度に差異があり、最も求人倍率の高い保安の求人倍率が2018年時点で7.8倍である一方、事務的職業については0.5倍と1倍を下回っている。
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