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新世代SKYACTIVの幕開け飾る「MAZDA3」、魅力的な2つのモデルに乗った車・バイク大好きものづくりコンサルタントの試乗レポート(2/3 ページ)

マツダのクルマづくりはデザインとSKYACTIVを冠したエンジン、トランスミッション、シャシーで飛躍的にそのクオリティを高めてきた。そしてSKYACTIV第2章ともいえるフェイズの幕開けを飾るのが2019年5月24日に発売されたアクセラの後継車「MAZDA3」だ。自宅付近のディーラーで早速試乗したので筆者が感じたことを記そう。

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4ドア版ロードスター?

 15S Touringに搭載されるエンジンは、排気量1.5l、自然吸気の「SKYACTIV-G 1.5」だ。スタートボタンでエンジンを始動すると、ほぼ無音の状態でアイドリングを始めた。電動パーキングブレーキを解除し、軽いクラッチペダルを踏み、節度の良いフィールのレバーでローにシフトし走り出す。筆者は試乗時には必ずオーディオをOFFにし、エンジン音や排気音の聞こえ方をチェックするが、車外の音や風切り音、ロードノイズはほぼ完璧に遮音されている。

 日頃、約40Nmという強大なトルクを1500rpmで発生させる排気量2lのディーゼルターボエンジン車に乗っている筆者にとって、1.5lのNAエンジンはさすがに低速トルクが弱く感じる。しかしアクセルペダルを踏み込むと、ガソリンエンジンらしいシャープな吹きあがりとともに、乾いた排気音が耳に届く。「あれ?どこかで聞いた覚えがあるな……」とつぶやくと、助手席のセールスさんが「もしかして、NDロードスターじゃないですか?」

 そうだ、ロードスターだ。パワフルではないものの気持ち良く回るエンジン、カチカチと小気味よく決まるMT。FFの癖などみじんも感じない素直なハンドリング。ダンピングが良く効き、かつ小さな段差などをしっかりステアリングホイールに伝えながらも、嫌な突き上げは全くない足回り。そして先の心地よい排気音。15Sグレードはロードスターの4ドア版といえるのではないだろうか。ロードスターは欲しいが、家族の理解を得られないというクルマ好きお父さんの声をしばしば聞くが、そういう方は是非15Sグレードに試乗していただきたい。

現時点で本命のXD

 次に試乗したのはセダン「XD L Package」だ。15Sのインテリアとの違いは、シートが本革の10Wayパワーシートになるくらいで大きな差は無い。そのシートだが、マツダらしくゆったりとしたサイズで、クッションの硬さ、ホールド感などはごく自然で、短時間の試乗ではその欠点が全く見つけられなかった。

 筆者は社会人になって初めて勤務したのがシートメーカーで、当時は欧州車のシートを分解してさまざまな調査をした。メルセデスベンツはクッション材にパームロック(ヤシの実の繊維)を使っていて独特だったが、最も疲れないとされるフランス車のシートは耐圧分布測定をしても国産車のシートと大きな差がなかった。しかし、疲労度が圧倒的に少ないのは事実だ。結局は「椅子文化と畳文化の違いだね」なんてことになっていたことを思い出す。

 国産車メーカーの中でシートをきちんと作り込んでいるのはマツダとSUBARUだと筆者は感じている。ただ、2004年式のレガシィB4のシートは運転時間が2時間もたつとお尻が痛くなった。2008年式メルセデスCクラスは何の変哲もない合成皮革のシートだったが、何時間走ってもお尻が痛くなることはなかった。

 現在の愛車BMW320dはM-Sportグレードのため、座面がアルカンターラ、サイドサポート部が合成皮革の組み合わせで、しかもサイドサポート部がかなり高いスポーツシートになっている。ただ、1990年代までのシートに比較すると(筆者は1989年式3シリーズ、1990年式5シリーズ、1995年式3シリーズを愛車としていた。もちろん全て中古車だが)やはりコストダウンの影響なのだろうか、3〜4時間の連続運転でお尻が少しむずむずしてくる。MAZDA3のシートの本当の出来は、500km以上走らなければ判断できないが、期待は持てる。

 さて、搭載されるエンジン、SKYACTIV-D 1.8はマツダが世界に誇る低圧縮比のクリーンディーゼルだ。今までに2.2l、1.8l、1.5lの全てのラインアップを運転してきたが、そのたびに驚かされるのがその静粛性と低振動だ。何度も引き合いに出して恐縮だが、愛車BMW 320dのエンジンと比較して劣るのは、低回転時のガツンと来る強大なトルクのみで、あとは全てにおいてマツダのクリーンディーゼルにアドバンテージがある。

 MAZDA3の1.8lディーゼルも事前の期待を裏切らないものだった。スムーズかつトルクフルな出力特性は6速トルコンATとのマッチングも良く、低回転でポンポンとリズミカルにシフトアップしていっても交通の流れをリードでき、ストレスの低いドライビングが可能だ。峠道でもその気になればかなりのスポーツドライビングができるだろう。

 一度クリーンディーゼルエンジン車を愛車にしてしまうと、強大なトルクと心地良さ、そしてランニングコストの安さが高次元でバランスしているため、なかなかガソリンエンジンに戻れなくなる。もし筆者がMAZDA3を買うとしたら迷うことなくこのエンジンを選択するだろう。ただし今の時点での話だ。話題のSKYACTIV-X搭載車が出るまでは最終結論は出せない。

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