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高齢者施設で採用広がる「PALRO」、SOMによるエッジコンピューティングが力にモノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

富士ソフトがイベント「KUMICO Meetup 2019」を開催。エッジコンピューティングを実現するために最適なハードウェア構成として活用できる「SOM(System on Module)」の事例講演として、同社が高齢者施設などに展開する「PALRO」の要素技術を紹介した。

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富士ソフトの石田卓也氏
富士ソフトの石田卓也氏

 富士ソフトは2019年6月12日、東京都内において、同社が運営する組み込み開発支援サイト「KUMICO」のイベント「KUMICO Meetup 2019」を開催。エッジコンピューティングを実現するために最適なハードウェア構成として活用できる「SOM(System on Module)」について紹介するとともに、SOMを有効活用できるアプリケーション事例となる、ロボット、セキュリティ、AIの導入を先進的に進めている企業やベンダーの講演を行った。

 これらの事例講演の1つとして、富士ソフト プロダクト事業本部 PALRO事業部 AI開発室長の石田卓也氏が登壇。「コミュニケーションロボットPALROの概要とテクノロジー」をテーマに、「PALRO」がさまざまな要素技術を搭載し、高齢者福祉施設における高齢者とのコミュニケーションで活躍していることなどを紹介した。

2010年から始まる「PALRO」の歴史

 PALROは当初、2010年にアカデミックモデルを教育・研究機関向けに出荷し、その2年後にビジネスシリーズを発売した。「この辺りから、徐々に用途が定まり、PALROの主戦場は高齢者施設向けになった」(石田氏)という。また、2013年には、兄弟的な製品である「ROBOTALK(ロボトーク)」を岡村製作所がリリースし、2015年にはDMM.comから「Palmi(パルミー)」が発売された。これらの製品は全て、富士ソフトが回路基板の設計から制御ソフトウェアの開発に至るまでを手掛けている。

「PALRO」の歩み
「PALRO」の歩み(クリックで拡大) 出典:富士ソフト

 現在PALROは、高齢者福祉施設向けモデルがレンタルという形で全国1300カ所以上に採用されている。レンタル料金は月間3万円(24カ月レンタル契約の場合)だ。高齢者の明るく楽しい、健康で豊かな生活を応援することを第一の目標に掲げ、レクリエーションやイベントの受付、入居者の話し相手、生活機能維持改善の支援などで、多忙な施設スタッフを手助けする。

 主要な機能の1つである日常会話機能は、話し相手の名前を呼びかけ、一生懸命会話を行い、さらに隣の人も巻き込んで、楽しいコミュニケーションの輪を広げるなどの効果がある。「施設スタッフとは話をしない高齢者も、PALROとならば話をするというケースもみられる」(石田氏)など、評価されているようだ。

 この会話機能についてはレスポンスが重要となるが、石田氏は「『こんにちは』と話しかけられたら、0.6秒程度で返事を返さなければいけない。これはクラウドで処理していては不可能であり、エッジコンピューティングであるからこそ実現できた。ここまでできているロボットは他にはない」と自信をみせる。このほか、20分ほどの介護予防レクリエーションの司会進行や、体操教室のインストラクター的な役を務められる健康体操機能なども搭載し、介護者の負担を軽減している。

「PALRO」のエッジコンピューティング
「PALRO」のエッジコンピューティング。これだけの処理を行って、0.6秒以内で返事を返さなければならない(クリックで拡大) 出典:富士ソフト

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