新生ウインドリバー発足から1年、「自動運転技術」が事業戦略の中核に:組み込み開発 インタビュー(2/3 ページ)
組み込みOSの“老舗”として知られているウインドリバーが、インテルの傘下から離れ、再度独立企業としての歩みを始めてから約1年が経過した。同社 プレジデントのジム・ダクラス氏に、現在の状況や事業戦略などについて聞いた。
自動運転技術への貢献に注力する理由
MONOist 自動車分野への事業展開についてどのように考えていますか。
ダグラス氏 クルマはコネクテッドカーになることでインテリジェント化し、付加価値が高まる。世界各国の自動車メーカーは、自身を“モビリティ企業”と呼ぶようになっている。ある自動車メーカーのトップは「20年後には自動車を作っていないかもしれない」とまで言っている。そういった時代に、差異化を果たすには自動運転技術が必要になる。
自動運転技術の開発が進む中で都市の形も変わってくる。過去10年間、さまざまな都市が自身をスマートシティーと言うようになっているが、その狙いはさまざまだ。安全性、利便性、効率性などいろいろあるが共通していることが2つある。1つは、スマートシティーのリーダーとなることによる、都市間競争の優位性の確保だ。もう1つは、自動運転技術が重要な位置付けを担っていることだ。だからこそ多くの大都市は、自動運転専用ゾーンを設けるようになっている。
スマートシティーにおける自動運転技術の価値は高い。例えば、交通渋滞がなくなって効率性が向上する。隊列走行によって燃費を向上して経済性が高まる。市民のより安全な住環境の提供にもつながる。社会インパクトは大きい。
自動運転技術に対する懸念の1つにセキュリティがある。このセキュリティの課題解決でウインドリバーに対する期待が高まっている。当社は、自動車メーカーだけでなく通信機器メーカーとも接点があり、コネクテッドカーの車両内、車車間、路車間、全ての通信に関わっており、競合他社と比べてもユニークなポジションにある。また、ウインドリバーが強みを持つ防衛分野の商用化技術転用についても、優位性がある。
MONOist ただし自動運転技術を実現するには、エッジ側の組み込みOSだけでなく、クラウドまで含めたさまざまな対応が必要になります。
ダグラス氏 自動運転技術が真の実力を発揮するには、エッジ、フォグ、クラウドという3つのコンピューティングが足並みをそろえる必要がある。ウインドリバーのポートフォリオはこれら3つをカバーする。
車両に当たるエッジ、インフラ機器に対応するフォグでは、実績のあるVxWorksやWind River Linuxなどの組み込みOSの他、仮想化プラットフォームの「Helix」が重要な役割を果たすだろう。今後の自動運転車では、IVI(車載情報機器)やメーター、各種制御システムのECUなどを、マルチコアプロセッサ上に統合していくことになるが、各機能の安全要求レベルに応じたパーティショニングが必要になる。自動運転技術に求められるこれらの課題は、Helixを持つとともに、航空宇宙分野での実績を持つウインドリバーであれば解決できる。
インフラとなる通信機器のメーカー向けには、高性能かつ高可用性で、小さいフットプリントのクラウドスケールプラットフォームが必要だ。コネクテッドカーや自動運転車にはOTA(Over the Air)によるソフトウェアのアップデートが必要だが、当社の「Titanium Cloud」が役立つ。
ソフトウェアのフレームワークから見たウインドリバーのポートフォリオ。「VxWorks」や「Wind River Linux」だけでなく、仮想化プラットフォームの「Helix」やクラウドの「Titanium Cloud」などもある(クリックで拡大) 出典:ウインドリバー
自動運転技術関連では、米国オハイオ州のコロンバスとダブリンの間を結ぶ道路におけるスマートモビリティプロジェクトに参画している。同プロジェクトには、オハイオ州立大学やTRC(米国国土交通研究センター)の他、ホンダやGM(General Motors)、フォード(Ford Mortor)、サプライヤー各社も加わる。ウインドリバーは「Rolling Lab」と呼ぶ実験車両を提供しており、パートナー各社の技術を搭載して実験地区を走行している。
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