検索
特集

“人”の働きを自然に助ける“日本らしい”スマート工場へ、産総研が団体設立スマートファクトリー(2/3 ページ)

産業技術総合研究所は2019年6月10日、「『人』が主役となるものづくり革新推進コンソーシアム(Consortium for Human-Centric Manufacturing Innovation、以下HCMIコンソーシアム)」の設立総会を開催し、同コンソーシアムでの取り組み内容を発表した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

従来のスマート工場団体と何が違うのか

 スマート工場実現に向けた取り組みとしては、既に政府系も含めてさまざまな団体が活動を行う。さらに、生産財メーカーなども各企業が個々で団体を設立しパートナーシップなどを進めている。

 その中で改めてHCMIコンソーシアムの意義は何があるのだろうか。関口氏は「従来の団体での取り組みに対して人を中心にするという考えが今までになかった点だ。また企業間や工場間などさまざまな企業を超えた枠組みで協調領域を拡張できるという点も特徴となる。加えて、実証の場としてCPS研究棟を備え、開発結果をすぐに実証し、その結果をフィードバックするというサイクルを動かせることも利点だ」と違いについて述べている。

 また、HCMIコンソーシアム副会長で、三菱電機の常務執行役員開発本部長である藤田正弘氏は「従来は『人と協調する』といっても機械ができることに合わせなければいけなかった。そうではなく、人が今まで通りの働き方をしていても機械が人の動きに合わせて最適に支援するような世界を描いている。ここまで考えると人の計測技術などが非常に重要になり、実現までに必要な技術開発の領域は広くなる。これらを協調領域とし、技術開発の側面で、基盤を確立できるようにしていく」と従来団体との違いを訴えている。

地域への進出など、2019年度のHCMIコンソーシアムの具体的活動

 2019年度のHCMIコンソーシアムの活動では、まず「ものづくり革新拠点構想の具体化と整備」と位置付け、CPS研究棟の利用環境の整備に取り組む。加えて、同様の拠点を国内の他の地域にも広げていく計画だ。具体的には京都と山形を候補として挙げるが「今後はもっと拠点を拡大していく。モノづくりの文化も地域ごとに異なるので、主研究はCPS研究棟で行い、地方拠点では地方向けのカスタマイズを行う役割分担になる」(関口氏)としている。

 さらに研究開発の具体化とロードマップ化として、2つのテーマでの取り組みを進める。1つ目が「育ち合う人と機械の協働システム」で、人を自然な形でサポートする協働ロボットシステムの確立に取り組む。自然なサポートにより人の動きなどを把握し、技能伝承や教育にも活用することを目指す。

 2つ目が「時空を超えた人と機械の協働システム」とし、「モノづくりIoA(Internet of Abilities)」の確立を目指す。モノづくりIoAとは、技能者などの動きのモデルをデジタル世界に完全に再現することで、そのデータから遠隔地でも同様の技能を発揮できるようにするという仕組みである。例えば、遠隔地からIoTやVRなどを駆使して、工場の機器の操作を行うというような仕組みをイメージしているという。

 これらの基盤技術として「作業者や作業のデジタルモデル化への取り組み」「ストレスフリーセンシング」「QoWモデル」などが必要となるとしている。

photo
研究開発の具体化とロードマップ化の方向性(クリックで拡大)出典:HCMIコンソーシアム

 その他、AI活用により現場力の見える化や意思決定のメカニズム解析などにより、トレーニング用のカリキュラムなどを作成したり、CPS研究棟および、産総研の専用スーパーコンピュータ「ABCI」などを活用した実証などを進めたりする。

photo
研究開発の具体化とロードマップ化の方向性(クリックで拡大)出典:HCMIコンソーシアム

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る